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■2022年12月27日■

ディアギレフ生誕150周年記念バレエガラコンサート
ミハイロフスキーバレエ劇場のイリーナ・ぺレン、マラト・シェミウノフ出演
アクロバットバレエ、クラシカルバレエの楽しさを満喫

 12月27日午後6時30分から渋谷区のオリンピック記念国立青少年センターカルチャー棟大ホールで、ミハイロフスキーバレエ劇場のイリーナ・ぺレン、マラト・シェミウノフと大勢の若手ダンサーが出演のディアギレフ生誕150周年記念バレエガラコンサートが開かれました。
 「バラード」よりアクロバット、「青列車」、「火の鳥」よりファイアーバード、「アントニーニ」アダ―ジョ、「ホロビツアンの踊り」、「瀕死の白鳥」など24の多彩なプログラムで観客を楽しませました。主催はNPOちきゅう市民クラブ。

アクロバテックなバレエの魅力、興行的な楽しさー-仙場真理
 1910年初演フォーキン振付「火の鳥」はロシアの民話をバレエ化したもので、ストラヴィンスキー曲とのコラボレーションの素晴らしさが、ペレンの柔らかな手首の動き、表情そしてシュミウノフとの動きの語り合いによってしっかりと伝わってきた。1917年上演エリック・サティ曲、ジャン・コクトー台本、パブロ・ピカソ美術・衣装、ディアギレフプロデュースバレエ「パラード」よりアクロバットでは、ペレンもシュミウノフも明るい紫色に大胆な模様のある全身タイツで、正にサーカスのような高度なアクロバットをバレエに取り入れた。1924年上演ダリウス・ミヨー曲「青列車」は、ヴァカンス地コート・ダジュールの海水浴場が舞台。当時の最先端のサングラスや水着を衣装として取り入れ、宙返り、派手なリフトなどのアクロバティックなバレエ。もちろんペレンの細くて長い手足、正統派の美しい動きが観客の見る目を何度もクラシカルなバレエに引き戻していたことだろう。
 ディアギレフ亡き後、米国にバレエ団を設立するために渡米したバランシン作品「ジュエルズ」(1967年)を佐々木美緒、妹尾弥矢子が好演。フォーキン振付、ボロディン曲「イーゴリ公」より「韃靼人の踊り」では戦利品として連れて来られた娘たちの望郷の念こもるエキゾチックなバレエをアンナ・ダニロヴァ、髙木風音、杉本リカが踊った。そして観客が大いに盛り上がる盤石の演目「ドン・キホーテ」よりグラン・パドゥドゥでは鎌田真帆、新井悠汰が見事に期待に応えた。ガラコンサート24曲の最終曲は、「アントニーニ」アダージオ。ペレンは白い衣装と長いシフォンのショール、シュミウノフは全身黒の衣装で、アクロバティックでありながらもショールの使い方が見事で、ペレンの体が宙に浮いているのではないかと錯覚するくらいのテクニック、そして天女の舞にも似た神々しいバレエ。
ペレンとシュミウノフのバレエリュスの演目披露と共に、興行的楽しさを追求した古典バレエ、そしてバレエリュスから新境地を開いたバランシンのバレエで大いに楽しませた。(12月27日)
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■2022年12月11日■

第3回「私のトルストイ」表彰式―穴井海人君ら5名入賞
M・カンディンスキー(ピアノ)&澤田智恵(ヴァイオリン)が記念演奏
金沢美知子・日本トルストイ協会会長(東大名誉教授)が総評

 12月11日午後2時から昭和女子大学学園本部館3階大会議室において、第3回ロシア文學読書感想文コンクール「私のトルストイ」表彰式が行われました。「世界に名だたるロシア文学は若者たちに生きていくための知恵と勇気を与えてきた」「日本の若者にもっとロシア文学を読んでもらいたい」との趣旨で開催したもの。入賞者=「戦争と平和」明星学園高校2年・穴井海人、「復活」―人間は何度も「復活」するー創価大3年・力諒子、「復活」―ネフリュ―ドフのエゴイズムに生じる利益とは何かー跡見学園女子大2年・坂内美早紀、「復活」―痛みの先にー跡見学園女子大2年・村川羽叶、「戦争と平和」昭和女子大2年・賈翎萱、奨励賞=「復活」―「復活」とトルストイの望んだ世界、そして希望―札幌大2年・手塚智哉。
 審査委員長は金沢美知子、審査員は三浦正巳、木村敦夫、伊東一郎、宮腰尊史、安部昇吉、鈴木芳子。MCはコンクール企画室長の大西裕子、統括はNPO法人ヘラルドの会創立者の藤沼敦子。
 第2部ではミハイル・カンディンスキー(ピアノ)と澤田知恵(ヴァイオリン)がチャイコフスキーのカンツォネッタ、ラフマニノフのプレリュード「鐘」、「ヴォカリーズ」、プロコフィエフの「ヴァイオリンソナタ第2番より1,4楽章」を演奏し感銘を与えました。
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■2022年12月3日■

ニコライ・ゴーゴリ原作、レオニード・アニシモフ演出
なんちゃってコミックオペラ「検察官」を上演
TOKYO NOVYI・ARTが梅若能楽学院会館で“新たな挑戦”

 12月3・4日、東京・中野区の梅若能楽学院会館で、TOKYO NOVYI・ARTによる、なんちゃってコミックオペラ「検察官」が上演されました。ニコライ・ゴーゴリ原作の人気作品「検察官」をレオニード・アニシモフ演出で新たな形のヴァリエーションで舞台にのせたものです。コミックオペラというスタイルでゴーゴリ的な特性を表現するためにクラリネット、ヴィオラ、打楽器の演奏家を招き、異文化の融合を試みたものです。アニシモフは「我々はレパートリー劇団で各作品を何年かかけて創り上げ、何年間も繰り返し上演しています。3つの異なるヴァリエーションでの挑戦が成長と新たな一歩となることを信じています。」とインタビューで答えています。観客の一人は「昨年との違いがよくわかり面白かった」と語っていました。(撮影=丸山英樹)
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■2022年11月22日■

ピッコロヴァイオリン奏者グレゴリー・セドフ久しぶりの来日・演奏
コロナ禍で延期コンサートの粘り強い実現!
ピッコロ、ヴァイオリン、ピアノ、バレエ、合唱、オーケストラで多彩なステージ

 11月22日午後6時30分から、東京・代々木のオリンピック青少年センター大ホールにおいて、「芸術の新たな地平を拓くガラコンサートArts for A11」と題するコンサートがピッコロヴァイオリン研究会の主催で開かれました。久し振りに来日したグレゴリー・セドフ(ピッコロヴァイオリン)をはじめ、ユーリー・コシェバートフ(ピアノ)、アレハンドロ・ベラ(ピアノ)、古舘由佳子(ヴァイオリン・ピッコロヴァイオリン)、小竹玄人(ヴァイオリン)らが出演・演奏し、コーラス、オーケストラ、タンゴダンサーらも出演する多彩なステージとなりました。(写真提供=主催者)

舞台と客席が一体となったー――仙場真里
 このコンサートのコンセプト「芸術の新たな地平を拓く」には2つの出会いがある。一つは2006年ピッコロヴァイオリンの演奏活動家グレゴリー・セドフと川島佳子との出会い。もう一つは遡って1993年セドフとアメリカの音響学者ハッチンス博士との出会い。この二つの出会いこそが「新たな音楽の地平を拓く」一歩であり、後世の音楽界に画期的な変革をもたらすと信じるピッコロヴァイオリン研究会の活動の根拠なのだ。
 コンサートは4部形式で、先ずはジプシーヴァイオリン演奏家、古舘由佳子とイタリア人ギタリスト、ジョバンニ・カルデリーニの演奏。静かで温かなギターの伴奏に古舘の情熱的で緊張感のある音色が心地良い。古舘のジプシーヴァイオリンの音色は聴く者一人一人に語り掛けてくる。特にモンティ曲「チャルダッシュ」は圧巻。メキシコ人ピアニストアレハンドロ・ベラによるピアソラ曲「リベルタンゴ」では独自の世界観を漂わせた。演奏後の日本語交じりの挨拶はチャーミングなキャラクターを感じさせる微笑ましいエピソード。 また、ピアソラプログラムの中のフルート奏者綱川泰典氏の演奏もピッコロヴァイオリンの音色と相まって演奏に奥深さを出していた。
 第2部は、ピッコロヴァイオリンとピアノ演奏によるクラシックバレエ。チャイコフスキー曲「白鳥の湖」よりナポリの踊り、パ・ド・ドロア、ロシアの踊り他がピッコロヴァイオリンの演奏とRBSバレエカンパニーのバレリーナによって披露された。
 第3部は、「ねむの木の子守歌」「ふるさと」「雲のかなた」「歌声の響き」の4曲をピッコロヴァイオリンの演奏と共に20余人のコーラスが日本人の心を伝えた。第4部は、アレハンドロ・ベラ氏とユースオーケストラ(大森大輝指揮)によるガーシュイン曲「ラプソディーインブルー」、グレゴリー・セドフ氏とのカールマン曲「チャールダーシュの女王メドレー」。「芸術の新たな地平を拓く」コンセプトに相応しい壮大なスケール感と世界平和を願う演奏。舞台と客席が一体となり、世界難を打ち破らんばかりの気迫あるコンサートだった。
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■2022年10月17日■

コロナ禍、モイセーエフバレエ団81名が28年ぶりに来日公演
生のモイセーエフに感激、感動の渦!スタンデイングオベーション起こる
本当に生き生きした舞踊、美しい衣装、元気をいただいた!(参加者の声)

 2020年、2021年の2度のコロナ延期を克服して、ついに実現したモイセーエフバレエ(イーゴリ・モイセーエフ記念国立アカデミー民族舞踊アンサンブル)日本公演は、10月17日新宿文化センター大ホール、18日めぐろパーシモンホール大ホール、19日横浜・関内ホール大ホール、21日埼玉・和光市民文化センターサンゼリア大ホールで開かれ、大成功を収めました。
 モイセーエフの舞台は「コロナ」と「戦争」で憂鬱な世界の民衆、日本の民衆―市民に感動と元気を与えました。ロシアの収穫祭の踊り、遊牧民の踊り、アドウイゲ人の踊り、ナナイ族の踊り、水兵の踊りー-広大なロシアの大地は民族舞踊の宝庫。さらに、ベラルーシの田舎の踊り、モルドヴァの円舞・群舞、ギリシャの群舞、べッサラビアのジプシー舞踊、メキシコの民族舞踊、スペイン舞曲、アルゼンチン牧童の踊りがエネルギッシュに、生き生きと紹介されたが、このバレエ団のダンサーの特徴は多様な民族の踊りを国境を乗り越えて、あたかも自分の出身地のものであるかのように踊ることです。踊りのなかに、人々の暮らし、人生の舞踊化―つまり、人間を知る事が踊りの本質と位置付けている集団なのです。これまでにない、涙のとまらない感動の舞台は舞踊表現のその本質からくるのです。
 参加者からは、「姉と2人で鑑賞した。とても楽しくて、クラシックバレエとは違って楽しくワクワクな時間でした。メッチャ感激感動!帰り道でも姉と2人で身体が動いてしまう程楽しいエネルギーをいただけました。ロシアバレエは素晴らしいですね。」(50代女性)、「芸術が国境を超える!瞬間が見えました。どれだけの思いを持って日本に来てくれたのでしょう。素晴らしい舞台スパシーバ」(60代女性)など、たくさんの感謝の感想をいただきました。(写真撮影=丸山英樹&石川剛)

楽しさとワクワク感―素晴らしい公演  仙場真里(バレエ評論家)
 雨天の中、開場を待つ長蛇の列には、公演実現を信じ2年前のチケットを握りしめた観客も大勢いた。最初の演目「夏」に観客は、モイセーエフバレエに出会えた喜びと感動で涙したことだろう。一糸乱れぬ群舞の動きの美しさと結婚式を祝う明るい踊りの中に極限まで鍛え上げられた肉体を見た。「カルムィク人の踊り」は筆者が最も待っていた演目。黒い衣装で三人の男性が鳥や馬の独特な動きを表現。一度見たら忘れられない踊り。「シルタキ」はギリシャ舞踊組曲、ゆっくりとした独特な足の動きを活かした男性の踊りの後には、女性が軽やかなステップで登場する。若く、美しい男女の陽気なダンスに興奮冷めやらず、第二部へ。「サッカー」では、ヘディングやパス、怪我して運ばれる様子をバレエの動きで表現する妙にただただ感心。グリンカ曲「アラゴンのホタ」はモイセーエフバレエ団演目の中で最も有名なもの。この踊りを見るたびにロシア人の善良さと、まっすぐでひた向きな心を感じる。観客が群舞を愛でる楽しみを満喫できる演目だ。「ガウチョ」では、山岳の光景がスクリーンに映し出され、三人のソリストがタップダンスを披露。足首が折れてしまうのではないかと心配するほどの柔軟な動き、バレエと言うよりは「芸」を見ているような楽しさとワクワク感が満載。ナナイ民族の遊び「ふたりの赤ちゃんの闘い」では、一人のダンサーが二人の子どもが闘う役を同時に演じた。全く恐れ入りましたとばかりに最後の種明かしに観客は大笑い、その後はダンサーへの尊敬の念に拍手が鳴り止まなかった。最後を飾ったのは、水兵の踊り「ヤーブラチカ」、モイセーエフバレエ団の粋を集めた踊りで観客と一体となった。観客の「よくぞ来日してくれました。待っていたんですよ!素晴らしい公演をありがとう。」の拍手に、ダンサーたちは「日本に来られて本当に良かった。ありがとう、ありがとう、ありがとう・・・」のお辞儀で返していた。(10月17日東京・新宿文化センター大ホール)
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■2022年10月16日■

モイセーエフバレエ団、28年ぶりに中東経由で来日81名到着
駐日ロシア連邦大使館にて歓迎レセプション
モイセーエフバレエを支える会とロシア連邦協力庁駐日代表部が主催

 モイセーエフバレエ団(イーゴリ・モイセーエフ記念国立アカデミー民族舞踊アンサンブル)は、28年ぶりにロシア文化フェスティバル組織委員会&ロシアン・アーツの招聘で来日しました。2019年に契約書に調印し2020年10月開催を目指しましたが、コロナウイルスの蔓延で延期、2021年10月開催予定も政府厚労省によるコロナ防止2週間隔離規制等で来日延期、2022年10月めざして3度目の挑戦を粘りづよく進めていたものです。
 10月6日、羽田空港にTK―198便で衣装など航空貨物が無事に到着、通関手続きを終え15日に11トントラックで貨物を引き取り準備に入りました。一行81名は、14日EY―878便で成田空港に61名来日、15日EY―878便で成田空港に19名が来日、同日EK-318便でエレーナ・シチェルバコヴァ芸術監督・団長が来日、全員が東京都内のホテルに揃いました。コロナ禍に加えウクライナ戦争のもとで、大勢のファンの方々に来日できないのではないかと心配をおかけしましたが、無事に日本にお迎えすることができました。
 10月16日午後6時から駐日ロシア連邦大使館で行われた歓迎レセプションでは、主催者を代表して栗原小巻(=モイセーエフバレエを支える会世話人代表、ロシア文化フェスティバル日本組織委員会副委員長、女優)、駐日ロシア連邦大使館を代表してゲンナジー・オヴェチコ公使が歓迎の挨拶を行い、エレーナ・シチェルバコヴァ芸術監督が日本公演の招聘に感謝の言葉を述べました。バレエダンサー&芸術監督の岩田守弘さんが乾杯の音頭をとり、歓談に入りました。また、「ご多幸をロシアから」のモイセーエフバレエを紹介する新作ドキュメンタリー映画が上映されました。(写真撮影=石川剛)
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■2022年9月1日■

サンクト・ペテルブルク音楽会館プロジェクト「芸術の大使館」イベント
s・ロルドーギン芸術監督推薦のロシアの新星3人来日・演奏
さいたま・横浜・武蔵野で開催、高水準の演奏に感動の拍手

 コロナ禍で3度延期されたロシアの新星コンサートは、8月27日トルコ航空でヴァイオリンのラヴィリ・イスリャモフ、トロンボーンのアレクセイ・ロビコフ、ピアノのアンドレイ・チェルコフが羽田に来日、フェスティバルのオープニングコンサートをはじめさいたま・横浜・武蔵野で無事に開催・出演し、大勢の聴衆に感動をあたえました。
 参加者は、「今回のロシアの方がたによる演奏は拝聴の際にまるでロシアの情景を見てるような意識下で、胸を打つコンサートでした。」「3人とも高い水準の演奏で感動の連続でした。ありがとう。」とのべていました。(撮影=丸山英樹)

トロンボーンの魅力全開―美しい響きが心に残る  佐野真澄
 8月31日、横浜の関内ホール(小)において、S・ロルドーギン芸術監督サンクトペテルブルク音楽会館プロジェクト「芸術の大使館」ロシアの新星コンサートが開催されました。新型コロナのパンデミックにより、2020年から延期されていましたが、この度ロシアから3人の音楽家が無事来日して、出演者、関係者、観客ともに待ちに待ったコンサートとなりました。
 1曲目はマリインスキー劇場所属のピアニスト、アンドレイ・チェルコフ。ベートーヴェン作曲ピアノソナタ第5番を、緊張感を持ちながらも軽快に、全曲を通してすっきりと演奏しました。次に国立モスクワ音楽院在学中のヴァイオリニスト、ラヴィリ・イスリャモフが登場。チャイコフスキー作曲、なつかしい土地の思い出op.42-1は、心に染みるメロディーを滑らかに優しい音で演奏し、ワルツ・スケルツォは、技巧的な作品をリズミカルに、また情感たっぷりに表現しました。3曲目は、国立サンクトペテルブルク音楽院講師のトロンボーン奏者、アレクセイ・ロビコフのベルギーの作曲家アッペルモントのトロンボーンとピアノのための協奏曲「カラーズ」。1.輝かしい曲想のイエロー、2.情熱的なレッド、3.2つの楽器の二重奏が美しく、日本的な響きも感じられたブルー、4.希望に満ちた力強い音で盛り上がりを見せるグリーンという、トロンボーンの魅力あふれる作品を演奏しました。
 第2部はトロンボーンのフェルヘルスト作曲のA Song JAPANから始まり、息の長い親しみやすいメロディーが印象的で、ピアノのオブリガートとともに美しい響きが心に残りました。ギルマン作曲交響的小品op.88は、トロンボーンの伸びやかなメロディーや音階の響き、ピアノとの掛け合いが楽しい曲。次のピアノソロは、チャイコフスキー作曲「ドゥムカ ロシアの農村風景」。悲しみに満ちた哀歌の部分と、一転して急速で明るい技巧的な部分の表現力と、ペダルの使い方が興味深かったです。プログラムの最後はヴァイオリンで、ヴァインベルグ作曲「モルドヴァ・ラプソディー」。ジプシー音楽的な即興や、独特の高揚感を自在に表現し、妖しく熱狂的な世界に引き込まれました。アンコールはフメレェフスカヤ作曲「メロディア」という曲で、さわやかな風がヴァイオリンの音に乗って心の中を通り抜けていきました。
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■2022年8月29日■

“ロシア文化芸術に対する日本の対応は政治情勢の低下に左右されない”
シュビトコイ大統領文化特別代理、シチェルヴァコワ・モイセーエフバレエ芸術監督、
ロルドーギン・サンクト音楽会館芸術監督、べススドノフ・ロ日協会副会長、
ガルージン駐日ロシア連邦大使らがモスクワ・タス通信で記者会見

 8月29日にモスクワのタス通信において、ロシア文化フェスティバルロシア組織委員会は、東京・紀尾井ホールでロシア文化フェスティバル2022オープニングコンサートが日本とロシアの芸術家の出演によって盛大に行われたことを受けて、著名5氏による記者会見を開きました。
 ミハイル・シュビトコイ=ロシア連邦大統領文化特別代理・ロシア文化フェスティバルロシア組織委員会委員長は、ロシア文化に対する日本における対応は緊迫する政治的情勢には左右されない、と強調し、次のように述べました。「現在の出来事は、文化が政治の影響を受けることが実際に理解できること、しかし文化は政治を超越していること、文化は永遠である一方、政治は今現在に働きかけているものであることを示しています。我々はこのことを理解する必要があります。ロシア、ロシア連邦の文化に対する日本の対応は、ロシアにおける日本文化への対応と同じで、ロ日の政治的情勢のあらゆる種類の低下に左右されていません。」
 ミハイル・ガルージン駐日ロシア連邦大使とセルゲイ・ロルドーギン=サンクトペテルブルク音楽会館芸術監督らはオンラインで参加しました。がルージン大使は「現在日ロ関係は戦後最も困難な時期にあるといえます。このような時期にこそ文化交流は求められています。なぜならそれは2国間の対話を強化し、雰囲気を作り出し、未来における関係改善のための環境を創造するのです。このロシア文化フェスティバルは、私の考えでは非常に成功理に、そして非常に力強く日本でスタートしました。このあと、サンクトペテルブルクの音楽会館のアーチストのコンサート、モイセーエフバレエの公演が続きます。日本のロシア文化藝術を愛する人々は待ち望んでいるのです。」と述べました。
 ウラジーミル・べススドノフ=ロ日協会副会長はロ日の文化が歴史的に密接に関わりあってきたことを指摘しました。「世界的に有名な日本の複数の作家が、自分たちはドストエフスキー、チェ-ホフやトルストイの「子ども」だと考えていることを述べれば十分でしょう。日本の作家には、トルストイの生前にヤースナヤ・ポリャ―ナをただトルストイに会いたい一心で訪ねた人もいます。日本人は皆、「白鳥の湖」「くるみ割り人形」などがどのようなものかをよく知ッています。こうした歴史的に培われてきたことを断ち切ろうとする試みは全く非現実的です。」
 イーゴリ・モイセーエフ記念国立アカデミー民族舞踊団芸術監督でロシア連邦人民芸術家のエレーナ・・シチェルバコワ氏は、前回の日本公演が1994年であり、30年近くも前のことでしたと述べ、「私たちはイーゴリ・モイセーエフの残した傑作プログラムを日本に持っていきたいと思っています。」と語り、「ロシア文化を消し去るのは不可能です。なぜならば、ロシア文化は世界の文化に影響をあたえ続けてきましたから。今秋の日本公演は日本の皆さんに大きな感動をもたらすことでしょう。」と述べました。
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■2022年8月29日■

ロシア文化フェスティバル2022オープニングコンサートを開催
日本とロシアの芸術家8人が出演! 松田華音、服部百音が熱演!
栗原小巻「芸術は政治超越」、ガルージン大使「文化交流の意義」強調

 8月29日午後6時30分から、東京都千代田区の紀尾井ホール大ホールで、ロシア文化フェスティバル2022IN JAPANオープニングコンサートが開かれました。このロシアの新星と日本の演奏家の合同コンサートは、サンクト・ペテルブルク音楽会館S・ロルドーギン芸術監督の協力のもとに行われたものでコロナ禍のもとで3名のロシア演奏家の来日・出演が実現しました。昨年と同様にオープニングはフェスティバルのテーマソング「ヤポーニヤ&ロシア」の歌唱を中村初恵(ソプラノ、アルパ=池山由香)が美しい歌声で演奏、両国代表挨拶はミハイル・ガルージン駐日ロシア連邦大使と栗原小巻・ロシア文化フェスティバル日本組織委員会副委員長が行いました(別項)。
 日本側はピアノの松田華音(エドヴァルド・グリーグ国際ピアノコンクール優勝)、ヴァイオリンの服部百音(ノヴォシビルスク国際ヴァイオリンコンクール最年少グランプリ)が出演、ロシア側はトロンボーンのアレクセイ・ロビコフ(チャイコフスキー国際コンクール優勝)、ピアノのアンドレイ・チェルコフ(ヴィトル国際ピアノコンクール優勝)、ヴァイオリンのラヴィリ・イスリャモフ(全ロシア音楽コンクール優勝)が来日・出演し、聴衆に感銘を与えました。(撮影=丸山英樹)

躍動感と華やかなロシア音楽に魅了――美山紅葉
 2022年のオープニングコンサートは、ソプラノの中村初恵のさわやかな声と池山由香のアルパの響きのロシア文化フェスティバルのテーマソングから始まりました。日本の演奏家の最初はピアニストの松田華音。今年生誕150年を迎えたスクリャービン作曲のワルツop.38を、いきなり香り立つような響きで弾き始め、宙に漂うような感覚と洒落っ気のあるスタイルで演奏。切れの良い、迫力のある現代ロシア作曲家シチェドリンの作品には思わず拍手が起きました。ラフマニノフ作曲楽興の時op.16-6は、華麗なテクニックを披露して、爽快感のあるスケールの大きな演奏で会場を包みました。
 次にサンクトペテルブルク音楽会館から、2019年チャイコフスキーコンクール優勝のトロンボーンのA・ロビコフと、ピアノのA・チェルコフによるヴェングロフスキー作曲のエレジー。切ないメロディーを、まるで人の声のような優しく温かな音色で、情感たっぷりに歌い上げました。静かに寄り添うピアノの音も印象的でした。続いて、そのチェルコフのピアノソロ。数々の国際コンクール優勝者は、バラキレフ作曲 東洋的幻想曲「イスラメイ」を演奏。明るくリズミカルに始まり、厚みのある重音をいとも軽やかに弾くのを聞いて、躍動感にワクワクし、華やかなロシア音楽に引き込まれました。ロシアの3組目は、2016年全ロシア音楽コンクール優勝のヴァイオリンのR・イスリャモフと、チェルコフのピアノで、カステルヌオーヴォ=テデスコ作曲 歌劇「セビリヤの理髪師」より「フィガアロのカバティーナ」の主題のパラフレーズを演奏。すらりと伸びた身体からエネルギッシュな音が出てきて、ヴァイオリンのメロディーが自由自在に飛び跳ねているようなイメージ。どこを取っても技巧的な曲を生き生きと弾ききって、将来に期待を寄せました。  最後は日本のヴァイオリニスト服部百音とピアノの三又瑛子。シマノフスキ作曲ノクターンとタランテラを演奏。不気味な雰囲気に始まり、細い高音に心揺さぶられ、音楽に吸い寄せられ、激しく熱く全身全霊で演奏する姿と響きに圧倒されました。今年生誕140年を迎えたストラヴィンスキー作曲のペトルーシュカを息の合ったピアノと色彩豊かに、リズミカルに演奏し、会場は熱気に包まれました。

芸術は政治を超越しているー――栗原小巻副委員長のあいさつ
 皆様今晩は。本日はロシア文化フェスティバル・オープニングコンサートにお出でいただきまして、組織委員会として深く御礼申し上げます。ロシアの新星と日本演奏家の合同コンサート、ロシアから来日されました3人の演奏家の皆様に心からの歓迎の気持ちをお伝えしたいと思います。日本側の優れた音楽家の皆様の演奏も楽しみです。芸術を通して伝え合う文化、コンサート実現にご尽力くださいましたロシア組織委員会、日本外務省に感謝いたします。尊敬するガルージン大使、ありがとうございます。チャイコフスキーの日記から、一節をご紹介させてください。「どれだけ権威のあるアカデミーでも、真の芸術家を解任することはできない。芸術家はアカデミーを超越している。芸術は政治を超越している。」と書いています。皆様最後までごゆっくりご鑑賞くださいませ。

文化交流の果たす役割は非常に大きいーM・ガルージン駐日大使の挨拶
 尊敬するロシア文化フェスティバルIN JAPAN 日本組織委員会副委員長 栗原様、親愛なるご来賓の皆様、ご参加の皆様、毎年恒例のロシア文化フェスティバル IN JAPAN のオープニングにあたり、ここで皆様にご挨拶することができて、私は大変嬉しいです。
 まず第一に、ロシア文化の通でいらっしゃいます日本の皆様にとっては、既に良き伝統となり、そして輝かしい伝統となっておりますロシア文化フェスティバルの準備に携わってくださいました、日本側組織委員会、ロシア側組織委員会に感謝いたします。また本日この場で、日本の優れた政治家であり、またロ日友好、善隣関係のために、沢山のことを成し遂げて下さいましたが、その命が悲劇的に奪われた、その元首相、そしてロシア文化フェスティバル組織委員会委員長の安倍晋三氏を、ここで思い出し、追憶することが私の責務と考えております。
 ロシア文化フェスティバル IN JAPANは、もう17回目を迎えました。この長期のプロジェクトが、非常に広い地域にまたがって実施されたことは非常に印象深いです。2006年から47都道府県の全てで実施され、観客数は1800万人を超え、日本で出演したロシアのアーティストの数は1万1千人以上となっております。これはロシアの芸術に対する日本の皆様の関心が非常に深く、そして、我が国との友好関係の構築を、真に目指してきたことの、目に見える証だと思っております。  ロシアと日本の文化交流は、何十年もかけて日ロ交流という織物をしっかりと紡ぎあげながら、順調に拡大し、そして内容的にも豊かなものになってきたことに、私は満足しております。両国の国民同士をより近づけ、そして友好、信頼、相互理解の空気を作り出すうえで、文化交流の果たす役割は非常に大きいです。ロシアと日本を結ぶ文化の絆は非常に強いのです。その強さは、長い、そしてまた深い歴史によって多くのことが説明できます。我々両国は、いつでも文化芸術の分野で互いを豊かに高める意味での影響を及ぼし合ってまいりました。例えば日本の文豪、ロシア語からの翻訳で有名な二葉亭四迷は、ツルゲーネフの強い影響を受けて作家として成長し、その長編小説「浮雲」はゴンチャーロフの「オブロ―モフ」が、一部もとになっていると考えられております。批評家でもある植村正久は、「ロシアの小説と小説家」という論文を残しました。その中で、ロシア文学、それはまるで朝日のように世界の隅々まで射し込まれている、これはツルゲーネフとトルストイによるところが大きい。彼らはロシアの小説の世界に続く守護神の門である、という内容のことを書いていらっしゃいます。日本映画の巨匠黒澤明は、ロシア文学、特にトルストイの小説にインスピレーションを見出しておりました。  ここ数年ですが、プーチン大統領と安倍元首相のご努力のおかげで、文化を含む広い領域での二国間関係を発展させるという事業が、稀にみる良い結果を出しております。私が申し上げたいのは、2018年~2019年の多面的プロジェクトであります。ロ日、日ロ交流年の実施のことです。これは互いの国を総合的に知らしめ、国民間の相互理解と親近感の情勢を促進するものです。ロ日関係史においては、様々なページがありました。今日、私たちは歴史上最も困難な時期の一つに遭遇し、その生き証人になっております。まさにこのようの状況の中にこそ、文化交流の役割と意義は、かつてないほど必要なのだと私は確信しております。文化交流は、好ましくない外からの作用から、二国間問題を守る、非常に信頼できるセイフティネットを築くのを助けてくれ、温かく友好的な交流を継続する可能性、互いに対する関心を呼び起こし、互いをもっとよく知る可能性を与えてくれます。これは、しいては将来的な関係を改善するための土壌を醸成してくれることになります。まさに、このような思いを胸に私たちは今日、ロシア文化フェスティバル IN JAPAN 2022 を開催いたします。フェスティバルのプログラムの最初の公演はサンクトべテルブルク音楽会館アーティストの公演です。また、27年ぶりに来日する、待ち焦がれた、待望のイーゴリ・モイセーエフ記念国立アカデミー民蔵舞踊アンサンブルの公演が控えております。ロシアのアーティストが、目の肥えた日本の観客の皆さんを喜ばせてくれると期待しています。フェスティバルに出席するアーティストの皆様には、芸術的な成果、そして公演のご成功を心からお祈りいたします。そしてまた、観客の皆様には心に残る鮮やかな印象を持ってくださることを願いつつ、私のご挨拶とさせていただきます。
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■2022年7月14日■

ヘンデル、ベートーヴェン、グリ―グ、スクリャービン、リスト
ミハイル・カンディンスキーの音楽世界―美しくあたたかな音色で

 7月14日午後7時から五反田文化センターにおいて、ミハイル・カンディンスキーピアノリサイタル、モスクワの風#4が行われました。最初はヘンデル作曲メヌエットト短調。とても美しい音でまろやかなトリルが響き渡りました。続いてベートーヴェン作曲ピアノソナタ第21番「ワルトシュタイン」。第1楽章は何かを秘めているようなマットな音質と、落ち着いたテンポで始まり、淀みなくメロディーは流れて、音楽が丁寧に構築されていきました。第2楽章は低音の優しい響きに包まれ、それぞれのメロディーは進むべきところへ向かっていく感じ。第3楽章はロングペダルを有効に使っていました。全体的にとてもバランスの良い、抑制の効いた演奏で好感が持てました。グリーグ作曲抒情小曲集より「おばあさんのメヌエット」は、懐かしさを覚える曲。ユニークな曲想もよく表れていました。「山の夕べ」は、幻想的で、不気味な雰囲気。「せせらぎ」は、細かな音の水の表現が素晴らしかったです。
 休憩の後は、今年生誕150年のスクリャービンの作品から始まりました。エチュードop.2-1は、光と影、希望と絶望が入り混じった深い内容を熱演。5つのプレリュードは、1曲目は流れに身をまかせたくなるような感じ。2曲目は細かく震える心のように始まり、次第に大きな動きへと変化していく様子。3曲目は、コラール風の曲をバランスよく演奏。4曲目は、しみじみとした曲をあたたかな音色で奏で、5曲目は幸福感が感じられました。リスト作曲のバッハのテーマによる変奏曲は、下行音型がずーっと気持ちをざわつかせ、頂点に達した時の一筋の光のようなメロディーと、最後のコラールに心が救われました。リスト作曲コンソレーション第3番は、宝石のような美しい音色で、空間に余韻が残りました。アンコールはムソルグスキー作曲展覧会の絵より「キエフの大門」。鐘の音がホールに鳴り響きました。(佐野真澄)
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■2022年6月26日■

“音楽に国境はない!”―素晴らしいロシア・ピアニストのリサイタル
メトネルとラフマニノフを満喫。透明感のある、天上の響きに感銘
イリヤ・イーティンー正統派ロシアピアニズムの継承者

 6月26日午後2時から名古屋市中区の宗次ホールでイリヤ・イーティン(リーズ国際ピアノコンクール第一位、ラフマニノフ国際コンクール第2位、日本音楽コンクール審査員)のピアノリサイタルが開かれた。現在、武蔵野音楽大学客員教授でコロナ禍でも演奏活動を継続してきた同氏は、メトネルとラフマニノフの名曲を卓越した技巧で演奏し、聴衆に感動を与えた。

魂を揺さぶる深い響きー中村初恵
 6月26日の午後、名古屋宗次ホールではイリヤ・イーティン・ピアノリサイタルが開催された。頻繁に目を瞑り、音楽と対峙する姿が印象的だ。
 コンサート前半はメトネル「忘れられた調べ」第1集Op.38 。ラフマニノフやスクリャービンと並ぶ1910年代のロシア作曲家である。初演時には"自然"という副題が置かれていたこの作品。第一曲目"回想ソナタ"から始まり、最終曲第八曲目の"回想ソナタ"再来まで、「回想」のモチーフが繰り返し登場する。一曲目に続く6つの曲は「歌と踊り」がテーマとなっており、人類にとって古来から根底にある二つの営みに光を当てたメトネル作品の重要な要素である。
 ほのかにひんやりとした透明感のある響きが、憂いを秘めたメトネルの世界を描き出し、時折、迸るような激情の色を見せる。第六曲「夕べの歌」で聴かせる繊細で優美な音色は傑出。
 後半のプログラムはオールラフマニノフ。メインは「ピアノソナタ第2番変ロ短調Op.36」。ラフマニノフがまだロシアにいた1913年に作曲され、亡命後の1931年に改訂版が出版。この日は改訂版に初版を取り入れたものが演奏された。イーティンの卓越した技巧が生きる第一楽章。鍵盤を這うように力強い音を奏でる大きな手と長い指は、どこかラフマニノフの再来を思わせる。第二章は幻想的に、第三楽章の最後には技巧的に装飾された循環形式によるコーダが用いられ、華やかに終結する。音楽が鳴り止むと、聴衆は拍手喝采、スタンディングオベーションが湧き上がった。
 後半のプログラムで特筆すべきは、休憩後すぐに演奏された二曲の歌曲(ピアノ版)であろう。『リラの花(12の歌 Op.21-5)』『ひなぎく(6つの歌 Op.38-3)』。演奏されることの少ない歌曲をあえてリサイタルで演奏したイーティン。歌曲のメロディーラインに沿ってシンプルに描かれているが、非常に内面的で、光を纒う様な穏やかな音色に惹き込まれる。詩の情景が在り在りと思い起こされた。イーティンの故郷への愛と想いが、一音一音に籠められた天上の響きと重なる。ロシア歌曲歌いの筆者にとって、堪らない贈り物となった。今頃は、イーティンの故郷でも美しいリラの花が咲き誇っているのだろうか。(アンコール曲は二曲=聴衆の涙を誘ったショパン「ワルツ第7番 嬰ハ短調 Op.64-2」。二曲目のモシュコフスキ「8つの性格的小品 Op.36」より「火花」では、軽妙なピアノの調べに会場が大きく湧いた。「音楽に国境はない」、改めてそう感じさせてくれた素晴らしいリサイタルだった。(撮影・文=中村初恵)
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■2022年5月17日■

チャイコフスキーやラフマ二ノフなどロシアの名曲を排外する風潮にたいして
日本の芸術家12氏がアピールを発表
“芸術は永遠である”“芸術に国境はいらない”―文化交流は相互理解の基礎

 ロシア文化フェスティバル2022IN JAPANは、チャイコフスキーやラフマニノフの名曲を排除しょうとする一部の風潮にたいして、日本芸術家12氏による“芸術は永遠である”“芸術に国境はいらない”という世界の文化人・芸術家へのアピールを発表しました。すべてロシア語文によるもので、女優の栗原小巻、策曲家の池辺晉一郎、音楽評論家の石田一志、日本舞踊家の藤間蘭黄、バレエ芸術監督・ダンサーの岩田守弘・千野真沙美、ピアニストの木曽真奈美・松田華音、声楽家の岸本力・中村初恵、日本民謡歌手・小山みつな、ポップス歌手・菅原奈月の12氏。
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■2022年5月10日■

栗原小巻の「松井須磨子」舞台公演が長野県と東京で
トルストイの「復活」のカチューシャで日本演劇に新息吹き

 構成・演出が加来英二、ピアノ=城所潔、衣装デザイン=栗原小巻、舞台監督=大山愼一でおこなわれた舞台「松井須磨子」公演は、日本初の新劇女優・松井須磨子の人生を栗原小巻によって演じられるもの。大正時代に一世風靡した松井須磨子主演のトルストイ作「復活」は、島村抱月とともに日本の歴史に新しい時代の息吹をもたらしました。長野県公演は長野・伊那・上田・松本・諏訪・大町で5月10日~18日に行われました。5月24日・25日・26日には東京・日本橋三越本店本館6F三越劇場で行われ、観客の拍手を浴びていました。
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■2022年5月5日■

M・ストラヴィンスキー指揮でオール・ラフマニノフの演奏会
交響楽団はやぶさは医大学生による高水準のオーケストラ

 5月5日東京オペラシテイコンサートホールで、ラフマニノフ生誕150周年にむけて、マリウス・ストラヴィンスキー指揮交響楽団はやぶさ&金子三勇士コンサートが開かれました。交響楽団はやぶさは、日本の医療を担う医科・歯科・薬科・看護科などの医学生を中心とするオーケストラで、2014年に設立され、すでに11回の演奏会を成功させてきました。本コンサートは、オール・ラフマニノフのプログラムで、スケルツォ・ニ短調、交響曲第2番ホ短調作品27、ピアノ協奏曲第2番ハ短調作品18を演奏、心に響くコンサートとなりました。

心に残る華やかなハーモニーとしなやかな音色  佐野真澄
 ロシアの大作曲家イーゴリ・ストラヴィンスキーの血を引く指揮者、マリウス・ストラヴィンスキーと交響楽団はやぶさのオール・ラフマニノフ・プログラムのコンサートが行われました。長身でスリムなマリウス・ストラヴィンスキーは優雅に登場し、2度目の来日は大きな拍手で迎えられました。1曲目は「スケルツォ」。少し控えめなテンポで始まり、リズムはかっちりと刻まれていましたが、音楽の流れや揺れは心地良く、落ち着いた演奏で上品にまとめられていました。2曲目は「交響曲第2番」。第1楽章は、コントラバスとチェロの低音から静かに始まり、だんだんとラフマニノフの世界に引き込まれていき、ハーモニーの厚みや、内なるメロディーも感じられました。第2楽章はヴァイオリンのリズムに乗せてホルンの音が高らかに響き、スケルツォの雰囲気も良く出ていました。グロッケンシュピールの澄んだ音色も印象的でした。第3楽章は冒頭のメロディーに続き、クラリネットのソロ、様々な楽器のソロが次々に出てきて聞き入りました。第4楽章はフィナーレにふさわしい金管楽器の華やかなハーモニーと、弦楽器のしなやかな音色が素晴らしく、心に残りました。休憩後は「ピアノ協奏曲第2番」。甘美なオーケストラの響きと、ピアニスト金子三勇士のアグレッシブなテクニックが発揮された演奏でした。プログラム終了後、友情の架け橋音楽国際親善協会三村京子理事長からは4月29日から1週間、指揮者マリウス・ストラヴィンスキーからとても濃いご指導をいただいたこと、指揮者本人からは、才能ある若者がそろっていて感動し、お互い心を開くことができて今日を迎えられたと挨拶がありました。アンコールは「パガニーニの主題による狂詩曲」第19変奏以降の部分が演奏されました。
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■2022年4月8日■

アンドレイ・コンチャロフスキー監督「親愛なる同志たちへ」公開ロードショー
新宿武蔵野館など全国23映画館で好評上映中
ソ連時代の歴史ドラマから未来を問う

 2020年制作のロシア映画「親愛なる同志たちへ」は、4月8日公開ロードショーが開始され、ヴェネチア国際映画祭審査員特別賞を受賞した作品だけに見ごたえのある作品で、84歳の巨匠アンドレイ・コンチャロフスキーの祖国ロシアへの愛と希望、身を切るような辛さが断腸の思いで描かれます。舞台は1962年に起きたノヴォチェルカッスク事件の映画化で、機関車工場で大規模なストライキが勃発、5000人の市民デモに戦車と銃で攻撃、行方不明の娘を主人公リューダが奔走するサスペンスドラマ。
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■2022年3月31日■

ドミトリー・フェイギン(チェロ)&新見フェイギン浩子(ピアノ) デユオコンサート
バッハ無伴奏チェロ組曲第6番 生き生きとしたチェロの響き
アンコールでグリンカとアレンスキーを演奏

 3月31日、東京都新宿区のルーテル市ヶ谷音楽ホールにて、「デュオ・フェイギン コンサート」が行われました。プログラム1曲目は、ドミトリー・フェイギン(チェロ)によるバッハ/無伴奏チェロ組曲第6番ニ長調BWV1021で、5弦の楽器のために書かれているので、通常のチェロでは演奏がとても難しいと言われている曲。アルマンドの軽やかで自然な流れや、クーラントの躍動感が心地良く、ジーグでは生き生きとしたチェロの響きに引き込まれました。2曲目は、黒のパンツスーツでピアノの新見フェイギン浩子も登場して、シューマン/幻想曲op.73を演奏。①何かを秘めて静かに始まり、阿吽の呼吸での掛け合いが素晴らしく、ピアノに支えられてチェロも伸び伸びと弾いている感じ。②シューマンらしいリズムやハーモニーが明るく流れる。③激しい音型に胸がゆさぶられ、華やかなフィナーレに希望を感じました。
 休憩の後はブラームス/8つの歌曲から。「歌の調べの様に」はチェロのメロディーが美しく輝き、「恋の歌」では、ピアノとチェロのハーモニーに瑞々しい気持ちを思い起こさせてもらいました。「子守歌」は、あの有名なメロディー。ひととき心地よいリズムに揺られ、「秋の気配」では寂しげな音色が胸に残りました。続いてファリャ/スペイン民謡組曲。ナナは、ピアノの下行音型の上にメロディーが奏でられる不思議な子守歌。ポロは、アルベニスのアストゥリアスを思わせる情熱的な曲。ホタは、スペインの明るい太陽や風が感じられました。最後のマルティヌー/ロッシーニのテーマによる変奏曲は、ドラマチックなピアノで始まり、軽快なリズムや哀愁漂うメロディーが印象的で、細かなところで2人の音楽がぴったりと一致して、どんどん引き付けられていきました。特にピアノの切れの良さが際立っていました。アンコールでは、グリンカ/別れと、アレンスキー/悲しみの曲が演奏されました。(撮影=丸山英樹)(佐野真澄)
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■2022年3月26日■

ユリヤ・レヴのピアノ伴奏公開レッスン
3月26日から4月17日へ藤岡市で開催

 『「伴奏ピアノ術」の極意』を著した国際伴奏ピアニストコンクール(1991年、ブラジル・リオデジャネイロ)2位のユリヤ・レヴが講師のピアノ伴奏公開レッスンは、3月26日にスタートし、4月3日、9日、17日と藤岡市で開催。「日本はピアノ伴奏芸術を習得する機会が多くない」と語り、「一緒に演奏するというだけではプロフェッショナルな伴奏といえない」と指摘し、「ピアノ伴奏という芸術分野にもっともっと注目してほしい」とアピールしています。
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■2022年1月21日■

日本公演めざし「モイセーエフバレエを支える会」がスタート
13人の世話人会、規約を確認、10月公演成功めざす
栗原小巻代表、ガルージン大使ら挨拶、小手川大助・大分芸大学長ら賛同

 1月21日午後4時より駐日ロシア連邦大使館ホールにて、「モイセーエフバレエを支える会」発足のための世話人会が開かれました。当初、同日午後6時30分より150名出席予定の結成レセプションが予定されていましたが、新型コロナウイルス・オミクロン株の蔓延のため中止し、少数の世話人会に切り替えて行われたもの。会では栗原小巻(女優)が世話人会を代表して挨拶、M・ガルージン駐日ロシア連邦大使が祝辞を述べました。I・チトフ=ロシア連邦文化協力庁駐日代表がモイセーエフバレエの魅力についてのべたあと、小手川大助(大分県立芸術文化短期大学理事長兼学長)、藤間蘭黄(日本舞踊家)、桜井多佳子(舞踊評論家)、佐々木チトセ(ロシアバレエTOKYO代表)、遠藤礼子(合唱団白樺民族舞踊部長)、佐野真澄(ピアノ講師)、篠原常一郎(ジャーナリスト)各氏がモイセーエフバレエの思いを語りました。会の規約を決め、支える会(ファンクラブ)の発足を確認しあいました。上記氏名の他世話人は林愛子(舞踊評論家)、川島京子(バレエ史研究家)、仙場真里(NPO立川日露文化交流協会理事長)、古川淳一(ティー・イソブチカンパニー代表取締役)を含め13氏です。
 なお当日の会にはマスコミ関係から毎日新聞文化部・外信部、テレビ朝日、北海道新聞、フリーカメラマン、東京MXテレビらが出席しました。(撮影=丸山英樹)
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■2022年1月14日■

現代ロシア絵画展が開幕(吉祥寺) 12月16日まで
R・D・イシマメートフ「故郷の春」、R・A・コボゼフ「ダゲスタンの静物」ら

 東京・吉祥寺のストンウエルアートギャラリー(石井ロシア絵画美術館)は、第4回現代ロシア絵画展を1月14日から(12月16日まで)開幕しました。現代ロシア写実主義絵画は、ラファエロの活躍した盛期ルネッサンスの伝統を伝承し、画家の目が見た通り写実的に描く画法を今に伝える正当な後継者です。西欧写実主義絵画が人間中心で、背景の風景は副次的役割に終始するのに対し、ロシアの絵は、自然に焦点があり、人間はそこに溶け込むように描かれています。西欧の自己中心主義的な文化傾向に対してロシアは10世紀に東ローマ帝国よりキリスト教を採り入れる遥か太古の昔より自然現象の中に神々の棲む多神教であり、自然を畏敬し愛おしむ原始宗教が民話や童話を通じ、ロシア人の心に生き続いているためだと言われています(案内リーフより)。R・D・イシマメートフ「故郷の春」、S・A・ニシチームヌイ「青い靄」、M・A・スーズダリツェフ「ボルガ河中流にて」、R・A・コボゼフ「ダゲスタンの静物」らが注目されています。
 美術館は金・土・日の週3日間の開館、時間は11時30分から16時まで。入場料は800円、大学生までの学生600円。アクセス=𠮷祥寺駅公園口から小田急バスで約5分、「新川」で停留所下車徒歩5分。(写真撮影=丸山英樹)
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