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■2025年8月18日■

イワン・ワシーリエフの引退公演がウエスタ川越で開催される
国立ノヴォシビルスク劇場軸にミハイロフスキー劇場、ボリショイ劇場ら11劇場から
難易度の高いテク二ック、人間の美しさ表現、日ロバレエ交流の明るい展望

 「ALEXANDRITE GALA-最後のワシーリエフ」と題したイワン・ワシーリエフ引退公演が8月18日、川越市・ウエスタ川越大ホールで開催されました。比類なきテクニックを持ち、ロシア功労芸術家、ミハイロフスキー劇場プリンシパル、ボリショイ劇場ゲスト・プリンシパル、国立ノヴォシビルスク劇場ゲスト・プリンシパルとして活躍してきたイワン・ワシーリエフの引退公演には、ボリショイ劇場からエレオノラ・セヴェナルド、デニス・ロディキン、マリインスキー劇場からエレーナ・スヴィンコ、国立ノヴォシビルスク劇場バレエからオリガ・グリシェンコヴァ、ロマン・ポルコフ二コフ、アルチョム・プガチョフ、ニキータ・クセノフォントフ、マリア・マシュキナ、ヴィクトリア・ダンコフツェヴァ、イーゴリ・レウーシン、さらにサンフランシスコバレエ、ハンブルクバレエ、テューリンゲン州立バレエ、元ベラルーシ国立ミンスクボリショイバレエ、東京バレエ団、ウイーン国立劇場バレエ団、ワガノワバレエアカデミー、元カレリア音楽劇場などから多彩なメンバーが勢ぞろいしパフォーマンスを繰り広げました。

舞台と客席で感情交流―楽しむクラシックバレエ   仙場真理(バレエ評論家)
 「Alexandrite Gala-最後のワシーリエフ-」を埼玉県川越市にあるウエスタ川越に見に行きました。ロシア人ダンサーと日本人ダンサーとの豪華なガラコンサートでした。観客のお目当てはもちろんワシーリエフです。完全にクラシックバレエの演技を飛び出してしまっているような、それでいてクラシックバレエの難しい技術も見る側には寧ろワクワク、キラキラしたライヴ感さえあるのです。企画したのはロシア国立ノヴォシビルスク劇場バレエ団所属の福田昂平がロシアと日本を結ぶプロジェクトとして立ち上げたスパシーバプロジェクトです。公演は2部構成でした。エレーナ・スヴェンコとイーゴリ・レウーシンの「グラン・パ・クラシック」(ダニエル=フランソワ=エスプリ・オベール曲、グゾフスキー振付)を見て「グラン・パ・クラシック」はこれがお手本ではないかと感じました。見ていて気持ちの良い気品と人間の美しさを表現していたスヴェンコには拍手が鳴りやみませんでした。エレオノラ・セヴェナルドとデニス・ロヂキンによる「ロミオとジュリエットよりバルコニーのパ・ド・ドゥ」(プロコフィエフ曲、ラヴロフスキー振付)では、極上のボリショイバレエに出会えた嬉しさに溜息がこぼれました。公私ともにパートナーであることから、振付の難所も息ピッタリのロミオとジュリエットでした。その他オリガ・グリシェンコヴァとロマン・ポルコフニコフの「スパルタクスよりアダージオ」(アラム・ハチャトゥリアン曲、グリガローヴィッチ振付)と「海賊よりパ・ド・ドゥ」(アドルフ・アラン曲、プティパ振付)では男性パートの力強さと女性のしなやかさ、美しさを難易度の高い演目の中で自由にのびのびと表現していて、彼らのバレエの後ろに情景がはっきりと浮かび上がっていました。そして、第1部最後にはワシーリエフと倉永美沙による「タリスマンのパ・ド・ドゥ」(リカルド・ドリゴ曲、プティパ振付)と第2部最後にはワシーリエフと菅井円加による「ドン・キホーテ」(レオン・ミンクス曲、プティパ振付)では最後に日本の観客へのワシーリエフと企画の福田昂平からのメッセージがこもっていたように感じました。それは、ブラボーを叫ぶ人、立ち上がって拍手をする人がいることで、踊ったダンサー達も一層嬉しくなり、それが呼応しあって舞台がどんどん熱くなってゆくからもっともっと楽しくなるよ、ノッてきたら立ち上がって叫んで良いんだよ、ダンサーと観客、舞台と客席とで正直に感情を伝え合おうよと。こんな風にクラシックバレエを楽しめる企画が増えてくれば、日ロのバレエ交流がこれまで以上に盛んになると確信し、ワクワクしながら帰路についた公演でした。
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■2025年8月17日■

ボリショイバレエの千野マルク、E・クリャーヴリナが来日しバレエのワークショップ
小学生クラス、中学生クラス、16歳以上クラス、オープンクラスに74人参加

 ボリショイバレエの千野マルク&エカチェリーナ・クリャーヴリナのバレエワークショップは、8月17日~19日の3日間、町田市の谷口バレエ研究所で開かれ、今年で3回目を迎えました。昨年は10日間の日程で延べ108人、今年は3日間で延べ74人の参加者があり、年齢は小学4年生から大人まで。日露関係が良好とはいえない現在ですが、毎回こんなに多くのロシアバレエ愛好者が参加していることは主催者のNPO法人立川日露文化交流協会自身も大変驚いています。小中学生はもちろんのこと、大人バレエの人たちも「来年も是非来日して、レッスンしてくださいね。」とマルクの目を見て伝えていました。小中学生はレッスンの後にサインや、一緒に写真を撮ってほしいと並んでいます。レッスン中はマルクやカーチャが先ずは手本を見せて、その後は手取り足取りの指導ですので、嬉しいやら、恥ずかしいやら、舞い上がりそうな表情です。
 参加者は、普段はスタジオに通っていますが、このワークショップには先生の許可をもらって参加しています。9時半から11時までの1クラスは、8歳から12歳までの小学生クラス、15分間の休憩を挟んで、11時15分からは中学生クラス、13時から14時半は16歳以上のクラス、その後オープンクラス、最後は個人レッスン希望者という過密なスケジュールです。マルクもカーチャも参加者の熱意に押されて、あっという間に時間が過ぎてしまうと驚いています。
 会場になっている谷口バレエ研究所の主宰者谷口登美子はマルクの祖母にあたり、現在モスクワにあるゴルデーエフ主宰ロシアバレエ団の教師千野真沙美はマルクの母です。写真にもある壁一面の絵画はマルクの伯母である画家の小河原渓子の作品です。残念ながら今夏で谷口バレエ研究所は閉じることになっていますが、マルクとカーチャの日程が許す限り来年も来日して実施する予定です。ロシアバレエを正しく伝えることはもちろん、楽しく、喜びでバレエに向き合えるようなメンタル部分の指導もできることを目指しています。40歳で定年を迎えるロシアのバレエダンサーですので、この問題はマルク達自身も抱えていることでしょう。美しい年齢の時代に精いっぱい舞台生活を送り、その後は?との問いに自信を持って後輩達にアドバイスできるようなワークショップを続け、バレエと言う芸術のジャンルに留まらず、様々な向き合い方があることをお互いに発見して行くことが期待されます。
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■2025年8月15日■

第7回現代ロシア絵画展を開催中!
日本で唯一現代ロシア絵画常設美術館―吉祥寺駅から15分

 東京都三鷹市新川6丁目(吉祥寺駅下車)にある現代ロシア絵画美術館(石井徳男館長)には、ロシア絵画244点が所蔵され、順次公開展示されています。新型コロナウイルス拡散以降、開催日は金曜日・土曜日・日曜日の週3日、午前10時30分~午後7時(入館は6時30分まで)まで。入館料は800円(学生600円)。現在、第7回現代ロシア絵画展をことし1月8日から開催しており12月21日まで継続されます。第8回現代ロシア絵画展は2026年1月17日~12月20日まで開催されます。(アクセス/JR・井の頭線 吉祥寺駅南口(公園口)改札口からエスカレーターを下り、そのまま同じ方向を30メートル進んで突き当たる井の頭通りの向かい側、ドンキホーテのビルの前のバス停(NO6,7)から乗車(乗車時間15分)。「新川」バス停留所で下車、バス進行方向へ徒歩5分。セブンイレブンの左側に美術館が見える。)
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■2025年8月6日■

アレクセイ・メル二コフ、パーヴェル・ネルセシアン、アンドレイ・ピザレフ
カワイ表参道で3日連続ソロコンサート

 カワイ・ピアノマスタークラス2025を記念して、模範演奏を兼ねてソロコンサートを渋谷区のカワイ表参道で開催しました。8月6日午後7時からアレクセイ・メル二コフ(ブラームス、ショパン、ラフマニノフ)、8月7日午後7時からパーヴェル・ネルセシアン(シューマン、ラフマニノフ、サティ、ラヴェル)、8月8日午後7時からアンドレイ・ピザレフ(ショパン、チャイコフスキー)が演奏し感銘を与えました。

これぞラフマニノフという重厚な響きーーー佐野真澄(ピアノ講師・音楽学)
<アレクセイ・メル二コフ>

 8月6日東京・カワイ表参道コンサートサロン「パウゼ」においてアレクセイ・メルニコフのピアノリサイタルが行なわれました。2019年チャイコフスキー国際コンクールで3位受賞以来の2度目の来日コンサートで、マスタークラスでは個人レッスンを担当しました。コンサートの始まりはブラームス作曲6つの小品op.118。中肉中背のバランスの良い体格で、黒のスーツで登場し、1:丸みのある音で始まり、音楽の方向性がはっきりしていました。2:何度も表れる語りかけるようなメロディーが優しく、終わり方がとても美しかったです。3:抑えていた感情が一気に溢れ出たような、気迫のこもった演奏でした。4:忙しく動き回る音の響きに楽しく振り回され、中間部は幻想的。5:コラール風の落ち着いたメロディー。トリルなどの細かい動きは即興的。6:平坦なメロディーの弾き方には、何か深い意味があるのだろうか?重苦しく、暗さに飲み込まれるかのような余韻を残して終わりました。
 続いてショパン作曲ノクターンop.27。1:流れと響きの美しい左手のアルペジオに始まり、次第に心がざわつき始め、後に立ち込めた暗雲が晴れたような清々しさを感じ、最後は祈るような気持になりました。2:一音一音の意味をつかみ取り、ショパンの世界観を、輝きのある音で自在に表現している演奏でした。次もショパンで、バラード4番。自然に流れていくメロディー。何かに導かれて弾いているような気がしました。
 第2部はラフマニノフの作品。前奏曲op.23。4:揺れるメロディーの、遠くで鳴っているオブリガートが心にしみて、クライマックスも輝かしい音でした。7:混沌とした音楽ですが、はっきりとした方向性が感じられました。10:春のような清々しい曲。左のメロディーが、どこまでも連れて行ってくれる感じが非常に心地良かったです。前奏曲op.32。12:ロシアの大地が思い浮かびました。流れるように進み、余韻は長めでした。10:しみじみとした曲想。心の中で何を思ってって弾いているのか?ピアノ・ソナタ第2番。Ⅰ:ラフマニノフ的要素の詰まった曲を、丁寧に演奏。これぞラフマニノフという重厚なピアノの響きを聞かせてもらいました。Ⅱ:主題のメロディーの音が耳に残る。語りかけるような弾き方も印象的でした。Ⅲ:序奏後に決然と入り、自由に華麗に展開していき、多声部の複雑な構造の主題をオーケストラのような響きで熱演しました。笑顔のチャーミングなメルニコフ、アンコールはショパンのマズルカ第41番、ワルツ第5番と第3番。息をするような自然な演奏でした。

上品に美しく演奏し魅了!―――佐野真澄(ピアノ講師・音楽学)
<パーヴェル・ネルセシアン>

 2日目の8月7日はパーヴェル・ネルセシアンのピアノリサイタルでした。最初はラフマニノフ作曲楽興の時op.16。1:黒にグレーのプリントのシャツで現れ、ピアノの前に座るとすぐに弾き始め、艶のあるメロディーの音が会場を包み込みました。まるで鍵盤を撫でているようなタッチ。2:メロディーの周りを、蝶が飛んでいるような感覚を覚えました。3:静寂の中に、一貫している精神の強さみたいなものを感じました。4:細部まで神経が行き渡っている音。上半身は全く動かさず、腕、手、指の落とし方で、あらゆる音を出しているように見える。5:ここで少し間をおいたので、会場の張りつめた空気が一瞬和みました。続いての曲は、繊細な和声の変化に心の奥が揺れました。静かに音の溶け合う最後も聞き入りました。6:そこから始まり、大きなうねりの渦の中にまきこまれ、その音の中にずっといたい感覚に陥りました。
 次にシューマン作曲子供の情景。1:ラフマニノフとは全く異なる響きで、夢の世界に誘われました。2~6:次々と性格の違う小曲を演奏。7:トロイメライは、3音目にして現実の世界から引き離され、まどろみの中に連れて行かれました。8~11:軽やかな騎士が登場したり、様々な感情を表す曲が出てきたり、何気なく弾いているように見えて、細かく様々なことをやっていることが伝わってきました。12:一音鳴るたびに、音楽が変化していく。13(終曲):テンポも極めて遅くなり、聞きながら一曲一曲を振り返り、改めて全ての曲が宝石のような音楽だと感じさせられました。会場内の空気が浄化されたようでした。
 休憩なしで、サティ作曲グノシェンヌ第1番。どこまでもサラッと、次の曲の前奏曲のように演奏して、ラヴェル作曲ラ・ヴァルスに突入。混沌の中から何かが少しずつ見えてくる感じにワクワクし、いよいよ待っていたフレーズが顔を出し、満たされた気分になりましたが、この曲はこれでは終わらず、ワルツに興じた人々が熱狂し崩壊寸前までいってハラハラさせられる展開を、ピアノ1台でオーケストラにも勝る大迫力で演奏。超高難度の曲にもかかわらず、ネルセシアンは楽しそうに、余裕すら感じさせる、この上ない演奏を聞かせてくれました。優しい笑顔とスリムな身体からは想像しにくいと思いますが…。
 アンコールはチャイコフスキー作曲:甘い夢、リャードフ作曲:音楽の玉手箱、シューベルト作曲:即興曲op.90-4、エルガー作曲:エニグマ変奏曲op.36より。ピアノを習っている生徒たちがよく弾く曲を、聞いた後にため息が出るほど上品に美しく演奏し、会場を魅了しました。

心躍る生き生きとした曲想ーーー佐野真澄(ピアノ講師・音楽学)
<アンドレイ・ピサレフ>

 8月8日、3日目、アンドレイ・ピサレフ ピアノリサイタルが行なわれました。第1部はショパンの作品。前奏曲op.45:背が高くて細身、白いシャツとエナメルの黒い靴を履いて登場。安定感のある音で始まりました。高音のメロディーの多彩な音色が印象的。スケルツォ第1番:正確で計算されていて、安心して聞ける演奏。どんな音を出すときも、やはり上半身は動かない。中間部は軽やかで、最後は輝かしい音で終わりました。スケルツォ第2番:正統派の演奏。ピアノを良く鳴らして、音楽がよどみなく流れて、とても若々しい。中間部も音楽は前へ前へと進んでいく。弾き終わったとき、私も一緒に駆け抜けたような爽快感がありました。スケルツォ第3番:攻めていく感じに、最初から心を掴まれ、主題のオクターヴの深い音が胸に響きました。装飾的な細かい音も、粒立ちよく整然と奏でられ、工芸品のようでした。楽譜にも忠実。コーダからは、一気に駆け抜けて存在感を持った音で終わりました。スケルツォ第4番:「スケルツォはね、こうやって弾くんだよ」と言っているようでした。音の向こうにショパンが見える感じ。中間部のメロディーはシンプルに弾いているけれど、メロディーもハーモニーも限りなく美しく、一貫して気高さを感じました。弾き終わった後に見せた、少し和らいだ表情が印象的でした。
 第2部はチャイコフスキー作曲グランド・ソナタop.37。Ⅰ:最初の祝祭的な主題から、会場中がピアノの響きで満ち溢れました。日本では演奏される機会の少ない曲ですが、聞き方まで導いてくれるような明解な演奏に感動しました。大きなロシア人から出されるオーケストラ的な響きと、思いを込めたチャイコフスキーの甘く切ないメロディーを熱い想いで聞きました。Ⅱ:さみし気なコラール調のメロディーに始まり、ロ音に支配された主題。執拗な同音が最後まで胸に突き刺さりました。Ⅲ:軽やかで、生き生きとした曲想に心躍りました。Ⅳ:シューマン風の元気なシンコペーションのリズムに始まり、色々なロシア風のメロディーが出てきて、映画で見たロシアの様々な景色が思い出されました。勢いのある力強さでどんどん盛り上げていって、最後は輝かしい喜びに包まれました。会場から惜しみない拍手が送られました。
 アンコールはチャイコフスキー作曲、四季より:11月トロイカと、ドゥムカの2曲。凛とした冷たい空気に響く鈴の音、アルペジオのあたたか味のある音、ロシアの民謡調のメロディー、華やかな装飾的響き、重苦しい悲痛なメロディーなどを、Shigeru Kawaiのピアノの魅力とともに堪能させてもらいました。以上です。佐野真澄
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■2025年8月6日■

夏季恒例のカワイ・ピアノマスタークラス2025開催される
国立モスクワ音楽院からピサレフ、ネルセシアン、メル二コフ来日・指導

 カワイ・ピアノマスタークラス2025は、8月6日~10日、渋谷区・カワイ表参道で開催されました。ロシアン・ピアノスクールin東京の音楽監督を長く務められた故セルゲイ・ドレンスキー=国立モスクワ音楽院教授の功績を讃え、毎年行われているカワイ音楽振興会によるピアノマスタークラスはアンドレイ・ピサレフ教授、パーヴェル・ネルセシアン教授、ドレンスキー門下のアレクセイ・メル二コフの3名の講師をロシアから迎えて行われました。バッハから古典、ロマン、近現代と幅広い作品に精通するピサレフ教授、ピアノ作品のみならずオペラにも造詣の深いネルセシアン教授、チャイコフスキー国際コンクール第3位の実力派ピアニスト・メル二コフがそれぞれ個性を発輝したレッスンをおこない充実した5日間となりました。
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■2025年7月27日■

日本ワガノワバレエ協会(JVBA)が長野でサマーキャンプ
タチアナ・ソロミャンコ、オリが・マカロワらワガノワアカデミー教師来日指導

 日本ワガノワバレエ協会(JVBA)が主催する「バレエサマーキャンプ2025in長野」は、7月27日から8月3日まで長野市芸術館としなのき(勤労女性会館)で開かれました。学習は実技、レッスン、体作り、講義で、講師陣はタチアナ・ソロミャンコ(ワガノワバレエアカデミー上級講師)、オリガ・マカロワ(同教師)、ユリア・カミロワ(同教師)、エレーナ・グラドコフスカヤ(振付家)、杉本亮子(バレエ解剖学)、渡部友世(JVBA理事・講師)、アンドレイ・オルロフ(JVBA代表理事・振付家)、大林貴子(ロシアバレエ史研究家)、アレクサンドル・ガサロフ(インストラクター)、堀内琴乃・小笠原聖子(バレエピアニスト)。このキャンプではワガノワ・メソッド=ロシアバレエ教授法に基づいて、ロシアから来日したワガノワバレエアカデミーの教師に直接指導を受け、楽しくレッスンしていました。
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■2025年7月27日■

ワレリー・ポリャンスキー指揮でNHK交響楽団コンサート
姫路・三原・福山でチャイコフスキーの名曲が響く

 指揮者ワレリー・ポリャンスキーを招いてNHK交響楽団は、7月27日アクリエひめじ大ホール、7月28日三原市芸術文化センター・ポポロ、7月29日ふくやま芸術文化ホール・リーデンローズにおいてコンサートを開催しました。どの会場もチャイコフスキーの傑作「交響曲第5番」がポリャンスキーの指揮で演奏され、そのしなやかな厚みのある響きが会場を圧倒し感銘をあたえました。29日のコンサートは小中学生が招かれた特別公演でした。
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■2025年7月25日■

YOUNG STAR BALLET GALA横浜・関内ホールコンサート開く
マリインスキー、ボリショイ、ダンチェンコ、ワガノワ学校、ボリショイ学校から勢ぞろい
ロシアバレエの高度なテク二ックで魅了

 7月25日横浜市の関内ホールにおいて、日本ワガノワバレエ協会&IMPRESSARIOによるヤング・スター・バレエ・ガラコンサートは、マリインスキーバレエ劇場のマリア・ホーレワ、ボリショイバレエ劇場のドミトリー・スミレフスキー、スタニスラフスキー&ネミロヴィチ=ダンチェンコ記念モスクワ音楽劇場のエレーナ・ソロミャンコら8名のソリスト、プリンシパルとワガノワバレエ学校、ボリショイバレエ学校の3名、日本人ダンサーはワガノワバレエ学校、ペルミバレエ学校、ノボシビルスクバレエ学校、PETEPA GRANDPRIX 2025受賞者などから9名が出演しロシアバレエの誇りと真髄を楽しく披露しました。

ロシアバレエの明るい未来を感じさせる舞台――仙場真理(バレエ評論家) 
 ヤング・スター・バレエ・ガラは、14時からAプログラム、19時からはBプログラムとロシアバレエの醍醐味を存分に味わったコンサートでした。コンサートの合間の司会者とヴィクトル・ニジェリスコイのユニークな掛け合いによる進行はとても面白く、バレエを初めて見た人にもロシアバレエに興味を持つきっかけとなったと思います。また、ロシア国立ボリショイ劇場、ロシア国立マリインスキー劇場、スタニスラフスキー&ネミロヴィチ=ダンチェンコ記念国立モスクワ音楽劇場のプリンシパル、ソリストやファーストソリストの演目の間のロシア国立ボリショイバレエアカデミー、ロシア国立ワガノワバレエアカデミーの生徒たちの若々しく、将来に対する希望に満ち溢れた好演には自然と背筋が伸びるような感じがしました。日本人のロシア国立ワガノワアカデミー、ロシア国立ペルミバレエ学校、ロシア国立ノボシビルスクバレエ学校、PETEPA GRAND PRIX2025優勝者達もロシアの若者に負けじと精一杯の思いを込めた演技が観客の心を打ちました。最初の演目「ゼンツァーノの花祭り」よりグラン・パ・ド・ドゥでノヴィコワとドミトリエフのバレエは、優秀な生徒のみが出演できる学校コンサートを思い出させてくれました。正しくロシアバレエを伝えてゆく若者の誇りのようなものを感じました。ワガノワアカデミーのフールマンによる「せむしの仔馬」より「水の女王のヴァリエーション」、「パキータ」よりエトワールのヴァリエーションでは、最高の身体的条件を兼ね備えた上に厳しいレッスンと繰り返し行われる学校コンサートによって培われた堂々たる動きを堪能しました。ボリショイバレエ劇場ソリストのスミルノワとミハルキンの「ガーシュウィンパ・ド・ドゥ」では、伝統的・正統派のロシアクラシックバレエを見せつつもジャズの旋律で軽快に、高度なテクニックで観客を魅了していました。Aプログラム最後はもちろん「ドン・キホーテ」第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥをホーレワとスミレフスキーが踊りました。ホーレワの可憐な容姿とはギャップを感じる大胆で華麗、情熱的なデュエットでした。また、ホーレワの足の甲には誰もが釘付けになってしまったことでしょう。スミレフスキーには、どうしても父親の全盛期を重ねてしまいますが、彼の踊りにはボリショイ劇場プリンシパルとしての誇りと責任それと同時に、ロシアバレエの明るい未来を感じざるを得ませんでした。Bプログラムは、この2人の「白鳥の湖」第2幕よりパ・ド・ドゥで幕を開けました。スタニスラフスキー&ネミロヴィチ=ダンチェンコ劇場のプリンシパル、ユルダシェフとソリスト ソロミャンコのドビュッシー曲の「月光」パ・ド・ドゥ、ラフマニノフ曲「春の水」パ・ド・ドゥでは、ボリショイ劇場にもない、マリインスキー劇場にもない正統派のロシアバレエの土台の上にドラマバレエを重視したこの劇場の特色を十分に見せた舞台だったと思います。またプロコフィエフ曲「石の花」よりアダージョでのポリーナ・杉崎とペリゾーニのバレエでは同名小説の世界に引き込まれました。無条件で誰もが感動するロシアバレエを正しく日本に伝えようとしている芸術監督アンドレイ・オルロフ氏の活動を今後とも注視していきたいと強く思いました。  
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■2025年7月17日■

『スペードの女王』(ロマン・チホミ―ロフ監督)『チャイコフスキー』(イーゴリ・タランキン監督)の2本を上映
全編チャイコフスキーの名曲が流れるロシア音楽映画祭に感動

 7月17日午後1時から『スペードの女王』(1960年制作)、午后3時05分から『チャイコフスキー』(1970年制作)が、浜離宮朝日ホール小ホール(300名)で上映されました。前者はプーシキンの小説にチャイコフスキーが作曲したオペラをチホミ―ロフ監督が映像化したもので、スヴェトラーノフ指揮でスラブ・アンジャパリーゼら人民芸術家勢ぞろいで出演。後者は名優インノケンティ・スモクトゥノフスキー主演、レニングラード管弦楽団、ボリショイ管弦楽団、ロジェストヴェンスキーらが演奏、出演する豪華さ。当日配布された映画祭リーフレットで、モスクワ在住の音楽評論家ユリヤ・べジェロヴァは「チャイコフスキーの作品がなければ世界の文化は全くちがうものになっていただろう」と指摘する。「現代のチャイコフスキー、それは生きており、常に新しく鮮やかで内容豊かな芸術的世界であり、あらたな解釈、新たな聴衆、演奏者や聴き手の新たな音楽経験そして人生経験とともに、常に変化している世界なのである。」とチャイコフスキーの現代的意義を強調します。(撮影=丸山英樹)
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■2025年7月5日■

アンドレイ・タルコフスキー映画祭を開催
「惑星ソラリス」「アンドレイ・ルブリョフ」を上映

 7月5日から8月1日にかけて、東京・早稲田松竹においてアンドレイ・タルコフスキー監督の名画祭が開催されました。7月5日~11日まで「惑星ソラリス」、7月26日~8月1日まで「アンドレイ・ルブリョフ」が上映されました。
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■2025年7月4日■

ガリーナ・ウラノワ生誕115周年記念映画祭を開催
ウラノワの芸術について舞踊評論家・村山久美子氏講演
「ガリーナ・ウラノワ」「ロミオとジュリェット」の2本上映

 7月4日午後1時から浜離宮朝日ホール小ホール(300名)でガリーナ・ウラノワ生誕115周年記念映画祭が開催され、満員の観客に感動をあたえました。舞踊評論家・村山久美子氏が「ウラのワの芸術」について講演、「世界を魅了し続けた20世紀を代表するバレリーナ、ガリーナ・ウラーノワ」は、「観客の胸に深く刻まれ今なお語り継がれている。ウラーノワの虚飾のないシンプルな動作の尊い芸術。そこには詩人中村稔氏の言葉を借りれば、「藝術が宗教と交差した一瞬に現れる永遠」が見えている。」と述べました。後、ドキュメンタリー映画「ガリーナ・ウラノワ」とバレエ映画「ロミオとジュリエット」が上映され、満員の観客に感動を与え、今後もロシアバレエを彩るスターたちの映画を上映してほしいと希望が語られました。
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■2025年6月27日■

ショスタコーヴィチ没後50周年記念映画祭を開催
『戦艦ポチョムキン』『十月』ショスタコ完全版を上映
満員の観客がその迫力に感動

 6月27日東京・浜離宮朝日ホール小ホール(300名)において、13時からセルゲイ・エイゼンシュテイン監督の「戦艦ポチョムキン」、14時30分から同監督の「十月」が上映されました。いずれもドミトリー・ショスタコーヴィチの音楽が収録された完全版の作品が上映され、その圧倒的迫力に満員の観客は一様に感動の感想をのべていました。当日全員に配布された記念のリーフレットでは、音楽評論家の石田一志が「世紀末ウイーン文化への関心に発するマーラー・ブームが展開されたが、ショスタコーヴィチはソ連・ロシアを代表する作曲家よりも西洋音楽史上の「ポスト・マーラー交響曲作曲家」としての高い評価」があたえられていると指摘しています。又、映画評論家の杉浦かおりは「戦艦ポチョムキン」は「一世紀を経た今でも、ここに古びた思想や現在では通用しない道徳基準など微塵もない。訴えは、実にシンプルなもの。パンを、公平を、戦争のない世界を・・・。戦艦ポチョムキンの砲身が向いているのは、私達一人一人の良心ではないだろうか。」と問題提起をなげかけます。(写真=丸山英樹)
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■2025年5月20日■

作家・ロ日協会会長のガリーナ・ドウトキナ来日・講演
演題「ポスト・ソビエト 現代ロシア文学の動向」に強い関心と感銘
大使館ホール、創価大学、上智大学で講演、市民団体ら参加

 作家のガリーナ・ドウトキナ=ロ日協会会長が、5月19日羽田空港に来日、20日駐日ロシア連邦大使館ホール、21日創価大学、22日上智大学で「ポスト・ソビエト 現代ロシア文学の動向」と題して講演し、参加者に感銘を与えました。大使館ホールでの講演会は、ロシア文化フェスティバル日本組織委員会はじめ日本対外文化協会、日本・ロシア協会、日ロ交流協会、JIC国際親善センター、日ロ創幸会、地球市民クラブ、日ロ文化サロンそしてロシア連邦協力庁対日代表部の9団体共催で行われ、満員の参加者で盛り上がり、終了後の交流懇親会も楽しく行われました。(撮影=丸山英樹)
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■2025年5月11日■

タチアナ・ソコロワ・デリュ―シナ訳・来日、レオニード・アニシモフ演出
TOKYO NOVI ART創立20周年特別記念企画
能楽堂公演「源氏物語」上演

 5月11日午後2時から、東京・中野区の梅若能楽学院会館において、TOKYO NOVI ARTによる紫式部原作「源氏物語」の演劇公演が開催されました。上演台本は中澤由佳、演出はレオニド・アニシモフ、発声指導は中村明一、発音指導は橘貴美子、音楽指導は町田育弥でした。「平安の時から受け継がれる日本のやさしさが織りなす、美しいこころの旅」をTOKYO NOVI ARTの俳優が能舞台で表現、日本の古典名作とロシア人演出家の出会いは新しい独自の演劇創造を切り開いています。(撮影=丸山英樹)
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■2025年5月9日■

アレクセイ・ナイデョーノフ=チェロ、モスクワ音楽院教授を迎えて
D・フェイギン、フェイギン浩子による「室内楽の調べ」開かれる
シューマン、ミャスコフスキー、クレンゲル、ショスタコーヴィチで聴衆魅了

 5月9日、渋谷区の渋谷美竹サロンにおいて、アレクセイ・ナイデョーノフ(チェロ)、ドミトリー・フェイギン(チェロ)、新見フェイギン浩子(ピアノ)による「室内楽の調べ」が開催されました。シューマン「幻想的小曲集OP73」、ミヤコフスキー「チェロソナタ第2番OP81」、クレンゲル「2つのチェロのための組曲OP22」、ショスタコーヴィチ「チェロとピアノのためのソナタOP40」、などが演奏され、聴衆に深い感銘を与えました。

重厚なハーモニー、優しく語り掛けるメロディー   佐野真澄
 来日したアレクセイ・ナイデョーノフ(チェロ)を迎えて、ドミトリー・フェイギン(チェロ)、新見フェイギン浩子(ピアノ)によるコンサート「室内楽の調べ」が行なわれました。第1部はナイデョーノフと新見フェイギン浩子で、1曲目はシューマン作曲幻想小曲集op.73。1〈静かに、感情を込めて〉:哀愁のあるメロディーがチェロの深い音によって奏でられ、ピアノのアルペジオの中に浮かび上がる音が柔らかく響き、揺れ動く心情を静かに表現していました。2〈活発に、軽やかに〉:生き生きとしたメロディーの、チェロとピアノの楽しそうな対話と、半音階のモチーフが展開して優しく終わりました。3〈急速に、燃えるように〉:階段を駆け上るような、勢いのあるシューマンらしい響きで音楽がどんどん進んでいく。チェロと、ピアノの左手のメロディーとのハーモニーや、前2曲のモチーフを絡めながら盛り上がり、華やかに終わりました。2曲目は、ミャスコフスキー作曲チェロ・ソナタ第2番op.81。第1楽章:ピアノのメロディーに寄り添うチェロのオブリガートが美しい。この曲でもピアノの左手とチェロは一緒にメロディーを奏でていて、その響きが耳に心地よかったです。第2楽章:どことなくグリーグの香りがする曲。1音1音思いを込めた演奏に惹き付けられました。チェロの半音の動きも美しいのに面白かったです。第3楽章:ピアノの、シンコペーションのリズムの上でチェロのメロディーが忙しく動き、アルペジオの上では息の長いメロディーを響かせる。和声感をはっきり出して明確に音楽を進めていきました。
 第2部はナイデョーノフとフェイギンによるクレンゲル作曲2つのチェロのための組曲op.22。1イントロダクション:重厚なハーモニー。2プレリュード:フェイギンの明るい音と、ナイデョーノフの落ち着いた音が、それぞれの役割を演じていました。3アリオーソ:優しく語りかけるようなメロディーを、まるで一人で弾いているかのような統一感のある響きで演奏し、胸の奥深くにまで入り込んできました。4ガヴォット:輪郭のはっきりとしたガヴォットで、緊張感がありました。中間部は重音のドローンに支えられて、メロディーが自由に歌っているように聞こえました。5サラバンド:静かで落ち着いた清楚なメロディーと、支えるハーモニーが美しかったです。6フゲッタ:2声のフーガを2人で交代に、一緒に、反行したり、寄り添ったりして、お互い見合い、聞き合い、感じ合いながら、力強い音で堂々と弾き切りました。2人ともタブレットの楽譜でした。最後は、ナイデョーノフのチェロとピアノの新見フェイギン浩子でショスタコーヴィッチ作曲チェロ・ソナタop.40。第1楽章:ざわつくメロディーがどこに向かっているのか?次第に緊張感が増していき、続いて夢見るようなメロディーをチェロが気持ちよさそうに歌う。拍を刻むピアノ、何かを暗示するようなチェロのメロディー、そして消えるように終わりました。第2楽章:ピアノの強奏がギラギラした冷たい雰囲気を出し、チェロのフラジオレットのグリッサンドによるアルペジオが、音も面白く動きもあって目が釘付けになりました。第3楽章:入りの音で表現したかったのは何なのか?不安を掻き立てる。いつまでも解決しない音に散々じらされた後、つかの間の休息が訪れる。第4楽章:ユーモラスな曲想。打楽器的なピアノと動きのあるチェロを聞いていたら、いきなりピアノ激しく動き出し、まくし立てるような勢いに圧倒されました。展開された主題を楽しんでいたら、期待を裏切るかのようなショスタコーヴィッチ的なあっけなさで終わりました。アンコールは、ヘンデル作曲ソナタよりラルゴ。3人がこの時間を愛しんでいるように聞こえて胸が熱くなりました。
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■2025年4月26日■

モスクワ・クァルテット マスタークラス、コンサートでフル回転
東京バラライカアンサンブル定期コンサートに招聘
ロシアの大自然を伝えるドムラ、バラライカの名演奏

 モスクワ・クァルテット(4名)は、4月19日に成田空港に来日、4月22日から26日までに2つの演奏会、マスタークラス、4回の交流会などを行い、28日に帰国しました。第14回東京バラライカアンサンブル定期演奏会ではドムラ・コンチェルト「第一楽章」、バラライカ・コンチェルト「グロテスクと瞑想」をアンサンブルと共演、単独演奏は「エレジー」「ワルツ・バラライカ」「ハンガリー舞曲第4番」を披露、4人が奏でる音はまるでオーケストラを彷彿とさせる演奏で観客を魅了しました。また、初心者対象のマスタ-クラスでは巨匠にもかかわらず本当に丁寧に熱心に指導され心打たれました。(撮影=丸山英樹)

モスクワ・カルテットーロシアの息吹きを感じさせる演奏  仙場真理
 東京バラライカ・アンサンブル第14回定期演奏会は、マネージャー八田圭子さんのご他界など様々な困難があったにも関わらず団員の方々の強い団結力により開催なったコンサートでした。6年ぶりにモスクワ・クァルテットを迎えての演奏会は観客ばかりでなく、指揮者吉岡弘行さん、団員の皆様からも喜びが伝わってくるようでした。第1部のブダーシュキン曲の音楽的絵画「市場にて」、ドムラコンチェルト第一楽章、クリコフ曲「古き菩提樹」、トロヤノフスキ―曲、北川つとむ編曲「ヴァリンカ」、北川つとむ編曲「思い出しておくれ」、ゴロドフスカヤ曲「果てもなき荒野原」、トロスチャンスキー曲バラライカコンチェルト「グロテスクと瞑想」ではバラライカとドムラのために書かれた作品を存分に味わいました。第2部では、ラフマニノフ曲「エレジー」、「ヴォカリーズ」(吉岡弘行編曲)、アンドレーエフ曲ワルツ「バラライカ」、ブラームス曲「ハンガリー舞曲第4番」、チャイコフスキー曲バレエ組曲〈眠れる森の美女〉より「ワルツ」(吉岡弘行編曲)、ドヴォルザーク曲スラヴ舞曲第2番作品72-2(吉岡弘行編曲)、ディーチェリ曲「行商人」という有名なクラシック演目をモスクワ・クァルテットのアレンジで楽しみました。モスクワ・クァルテットはドムラ奏者アレクサンドル・ツィガンコフとグースリ奏者インナ・シェフチェンコ、バラライカ奏者ヴァレリー・ザジーギンとピアニストのラリーサ・ゴドリブと言う2組の夫婦で結成されています。高度な技術は言うまでもなく、演奏が始まると同時に新緑眩しい5月のロシアのそよ風が吹いてきたかのような気持ちにさせてくれました。ドムラとバラライカの音色は優しく、町の景色を想像させ、グースリは空気のにおいを感じさせていました。そこに木琴やフルート、アコーデオンやタンバリンが景色に枠を付けて瞬間を切り取っているかのようでした。ロシアの素晴らしさを伝える芸術には絵画、文学、音楽、バレエなどがありますが、バラライカやドムラの演奏はそれらの芸術の生まれる土台としてのロシアの大自然を静かに私たちに語り伝える芸術だと言えるのではないでしょうか。
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■2025年4月23日■

S・ロルドーギン芸術監督推薦によるロシア新星コンサート
ヴァイオリンのP・ミリュコフ、フルートのP/フドノゴフ、ピアノのA・クリュチコ出演
鳴りやまない拍手、優れたテク二ック、ロアヒアの魂がこもる演奏

 毎年恒例のイベント、ロシアの新星コンサートは、芸術の都サンクト・ペテルブルク音楽会館芸術監督特別推薦による実力派のソリスト3名が今回も来日・出演しました。2015年第15回チャイコフスキー国際コンクール第3位のヴァイオリニスト=パーヴェル・ミリュコフ、2020年ウイーン国際音楽コンクール優勝のフル―ティスト=ピョートル・フドノゴフ、2022年ラフマニノフ記念国際コンクール優勝のpianist=アレクサンドル・クリュチコの3名。4月23日東京・音楽の友ホール、24日さいたま市文化センター小ホール、25日横浜・みなとみらいホール・小ホールで開催され、ロシア音楽の巨匠の作品を中心にロシアの魂のこもる感動的な演奏を披露し惜しみない拍手が贈られました。(撮影=丸山英樹)

大きな拍手が鳴りやまないー音楽の友ホール 佐野真澄(ピアノ講師・音楽学)
 東京/音楽の友ホールにおけるロシア新星コンサート2025は、第1部1曲目はフルートのピョートル・フドノゴフとピアノのアレクサンドル・クリュチコで、ラフマニノフ作曲ヴォ―カリーズ。ゴールドに輝くフルートから、まろやかな音で始まりました。真っ直ぐに響いてくる素直な音に好感を持ち、柔らかなピアノのアルペジオに心を奪われました。2曲目はクリュチコのピアノ独奏で、チャイコフスキー作曲四季より2月謝肉祭:いきなりにぎやかな和音が鳴り響き、音楽のどんどん進む感じにワクワクしました。前席のロシアの方も楽しそうでした。11月トロイカ:輝く雪の大地にトロイカが走っていく光景を思い起こすロシア的なメロディーと、様々なアルペジオによって鈴の音や情景が表現されて、冬が来たことが本当に嬉しいという気持ちが伝わってきました。12月クリスマス:暖かなお部屋、家族の笑顔、ロシアのクリスマスを想いながら聞きました。続いてヴァイオリンのパーヴェル・ミリュコフ。チャイコフスキー作曲メロディーop.42-3:滑るような魅力的なミリュコフの響きと、とろけるようなクリュチコのピアノに引き込まれました。ワルツ・スケルツォop.34:浮遊感のあるリズムに身体が自然に揺れてしまいました。難所をさらっと弾いてしまい、カデンツァは見せて、聞かせてくれて、大いに盛り上がり、思わずブラボーが飛び出しました。瞑想曲op.42-1:静かなピアノの、長い前奏の後、満を持してヴァイオリンが登場。どこまでも登りつめて、どんどん引き付けられ、中間部の後はピアノのオブリガートに胸が震えました。第2部はフドノゴフのチャイコフスキー作曲オペラ「エフゲニー・オネーギン」よりレンスキーのアリア、で始まりました。温かみのある音で哀愁に満ちたメロディーをフルートで歌い上げ、心情を写し出すかのようにピアノが寄り添いました。プロコフィエフ作曲フルート・ソナタop.94より第2楽章スケルツォ:リズミカルなピアノに始まり、プロコフィエフのおどけたメロディーを生き生きと演奏。特に2人のスケールの掛け合いが印象的でした。続いてヴァイオリンのミリュコフのプロコフィエフ作曲ヴァイオリン・ソナタ第1番op.80より第3楽章アンダンテ:神秘的な美しさが感じられ、ヴァイオリンとピアノのユニゾンの響きも、終わり方も独特で、1度聞いたら忘れられない曲です。次に、クリュチコのピアノ独奏で1曲目はショパン作曲アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズop.22。左手のアルペジオに乗せてメロディーがよどみなく流れだしました。ポロネーズ冒頭Tutti部分のこのようなテキストは見たことが無かったので驚きました。その後も全体的に非常に軽く弾いていたので、構成的にも、ショパンの美しいメロディーやハーモニーの響きなども、緻密に研究して、クリュチコの本当に弾きたいショパンを聞ける日を期待したいと思いました。最後はストラヴィンスキー作曲バレエ「ペトルーシュカ」よりロシアの踊り:躍動感あふれる演奏。アクセントやffの音のインパクトの強さに驚き、音の動きがバレエの場面と重なって大変興味深かったです。様々な弾き方があることを示してくれました。多くの来場者が聞きたかった1曲、大きな拍手がなかなか鳴りやみませんでした。

難曲の技巧的演奏に観客を魅了―さいたま市文化センター  佐野真澄
 さいたま市文化センター小ホールにおけるロシアの新星コンサートは、まず始めはピョートル・フドノゴフのフルートでラフマニノフ作曲ヴォカリーズ。澄みきった響きで主題が始まり、くり返しの後は音色を変えて語りかけるように演奏。心の中の日常のわだかまりが浄化されていくようでした。次にアリャビエフ作曲ナイチンゲール。楽しそうに音を奏でる姿が印象的で、カデンツァではホールにナイチンゲールの声が響き渡りました。リムスキー=コルサコフ作曲オペラ「サルタン皇帝」より「熊蜂の飛行」。あっという間に熊蜂は飛んで行ってしまいました。息の長い演奏でした。続いてヴァイオリンのパーヴェル・ミリュコフによるプロコフィエフ作曲ヴァイオリン・ソナタ第1番op.80。第1楽章はクリュチコのピアノの不気味な音から始まり、ヴァイオリンのトリルに続いて陰のあるメロディーが続き、柔らかな優しいピアノの不協和音の響きと、風の音に対するピッツィカートのヴァイオリンの音が最後に耳に残りました。第2楽章はピアノとの掛け合いが緊張感を増していきました。伸び上がるように弾くミリュコフの姿も印象的でした。第3楽章は、とりとめの無い感じの序奏から、ヴァイオリンとピアノのユニゾンの独特の響きと、明暗入り混じったメロディーを追いかけて、最後はとても謎めいた終わり方でした。第4楽章は力強いリズミックな曲。ヴァイオリンのピッツィカートとピアノのスタッカートのユニークな響き、目まぐるしく変化する曲想と、聞きどころ満載でした。第2部は全てアレクサンドル・クリュチコのピアノ独奏で、1曲目は、演奏される機会の少ないチャイコフスキー作曲プレトニョフ編曲バレエ「眠れる森の美女」のコンサート組曲。1プロローグ:華やかに始まりましたが、ピアニスティックな数々の技巧と、響きの豊かさが求められる曲に鳥肌が立ちました。2小姓たちの踊り:ユーモラスなリズムとメロディー。超絶技巧の編曲にため息が出ました。3情景:超高速の連打とパッセージ。4アンダンテ:ホッと一息つきました。5銀の精:愛らしい妖精の曲なのに、やはり難度は高い。6長靴をはいた猫と白い猫:クリュチコが猫になりきっていました。7ガヴォット:チャーミングな演奏でした。8カナリアの精:高音のキラキラした響きが、まるでオルゴールのよう。9赤ずきんと狼:少しずつ緊張感が高まっていく表現が見事でした。10アダージョ:夢見心地のメロディーとハーモニーにうっとり。散りばめられたアルペジオも美しかったです。11フィナーレ:弾くだけでも大変な曲を、リズミカルに、メロディーを浮き立たせて、細部にまでこだわって、終曲にふさわしくピアノを最大限に鳴り響かせて観客を魅了しました。続いてストラヴィンスキー作曲バレエ「ペトルーシュカ」からの3楽章より。第2楽章ペトルーシュカの部屋:抜粋で演奏する場合に、第2楽章→第1楽章という順番で聞くのは初めてでした。弾いているというより、生き物が動いているかのような表現で、心理描写がピアノでこんなに表現できることにも驚きました。第1楽章ロシアの踊り:音量の幅がすごく広い。指が鍵盤の上を飛び跳ねて、バレエを踊っているかのようでした。会場は大きな拍手が起こりました。こんな難曲を弾き続けて、クリュチコの指と身体と頭が疲弊してしまわないかと心配になりました。

音楽芸術の役割を強く感じた一夜―横浜みなとみらいホール  佐野真澄
 横浜/みなとみらい小ホールにおけるロシアの新星コンサートプログラム1曲目はアレクサンドル・クリュチコのピアノ独奏でチャイコフスキー作曲四季op.37bisより。2月謝肉祭:始まりは弾けるリズムと明るい雰囲気で、たたみかけるようにどんどん進む音楽。心にある楽しい思い出を描いているようでした。11月トロイカ:青い空、白い雪原、澄んだ空気を感じさせる出だし。滑るような右手のアルペジオに、馬たちが鈴を鳴らしながら気持ちよく走っている様子が浮かびました。12月クリスマス:大切な人たち過ごす楽しい様子が、温かい音から伝わってきました。次はフルートのピョートル・フドノゴフで、ケーラー作曲「ロシアの贈り物」op.60-3。ちょっと意味ありげな前奏と、気持ちの揺れ動くような曲想に、どんな贈り物なんだろう?と思いましたが、最後の明るく速いメロディーに安心しました。続いてヴァイオリンのパーヴェル・ミュリコフでチャイコフスキー作曲メロディーp.42-3。落ち着いた響きで始まり、余裕のある演奏で、どこまでも美しかったです。2曲目はワルツ・スケルツォ。聞かせて、見せて、聴衆の心をつかんでしまう演奏家だと思いました。甘美な音に一瞬涙がこぼれそうになりました。3曲目は瞑想曲op.42-1。長めの前奏で、ヴァイオリンの音を早く聞きたい気持ちになっていたところに、スーッと流れてきた切ないメロディーに心が引き裂かれそうでした。クリュチコのピアノのオブリガートも悲しく美しかったです。第2部もミュリコフからで、プロコフィエフ作曲ヴァイオリン・ソナタ第1番。第1楽章:ピアノの重々しい低音に支えられ、ヴァイオリンのトリルの序奏が始まり、切れ目なく内向きのメロディーが続いていき、2声部がぶつかり合いながら高まっていきました。モノクロの情景を表すかのようなピッツィカートが胸に刺さりました。第2楽章:堂々とした躍動感あふれる曲想。ヴァイオリンとピアノが反発したり寄り添ったり、掛け合ったりしながら展開し、最高潮に達しました。第3楽章:弱音器を付けて、瞑想的な気だるい始まり。2つの楽器のユニゾンが心地よく、美しい不協和音に魅せられました。第4楽章:変拍子のエネルギッシュな難曲を、2人が一体となって「我々の音楽」を全身全霊で奏でていて感銘を受けました。次はフドノゴフのフルートでアリャビエフ作曲ナイチンゲール。日本人の矢代秋雄編曲版を演奏してくれて嬉しかったです。ナイチンゲールの鳴き声がひときわ冴え渡って聞こえました。リムスキー=コルサコフ作曲「熊蜂の飛行」は、ピアノをあおるくらい速くて、熊蜂は、ついには見えなくなりました。最後はピアノのクリュチコでストラヴィンスキー作曲バレエ「ペトルーシュカ」からの3楽章より。第2楽章ペトルーシュカの部屋:ダンサーの動きの表現や情景描写の巧みな表現に、身の毛がよだったり、ホッとしたりと心を動かされました。第1楽章ロシアの踊り:最後はこれでなくては、という1曲。バレエの世界を自在に演出、演奏して、夢の世界に連れて行ってくれました。鳴りやまない拍手と飛び交うブラボーに、音楽という芸術の役割を強く感じた一夜になりました。3日間の新星コンサートの、全ての曲を演奏したピアノのクリュチコに賞賛と労いの気持ちを伝えたいと思います。
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■2025年4月22日■

ロシア文化フェスティバル2025IN JAPAN歓迎パーティ―開く 帝国ホテル
M・シュビトコイ大統領文化代理、V・ベススドノフロシア組織委副委員長ら挨拶
サンクトペテルブルク音楽会館マリヤ・ハニコ代表らと交流
上月豊久・駐ロ日本大使(前)が乾杯の音頭

 4月22日午後4時から東京・帝国ホテル中2F菊の間でロシア文化フェスティバルオープニングコンサート成功、ロシア代表団歓迎パーティ―が開催されました。シュビトコイ・ロシア組織委員会委員長は2018年いらい6年ぶりの来日・出席でした(安部晋三国葬にはロシア代表として来日出席)。冒頭、栗原小巻・日本組織委員長が歓迎あいさつをおこないました。シュビトコイ委員長、ベススドノフ副委員長がコロナやウクライナ戦争などさまざまな困難をのりこえて成功裏に日本におけるロシア文化フェスティバルを力強く推進していることを評価し今後の発展を祈念しました。上月豊久・前駐ロ日本国大使は文化交流の大切さをのべ乾杯をしました。サンクト・ペテルブルク音楽会館代表のマリヤ・ハニコ氏は3人のソリストとともに参会者と交流し、入院中の長塚英雄・日本組織委員会事務局長を東京科学大学病院に見舞いました。(撮影=丸山英樹)
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■2025年4月21日■

日露和親条約170周年記念ロシア文化フェスティバル2025IN JAPANオープニング日ロ合同コンサートを開催!
M・シュビトコイ、栗原小巻両国組織委員長が挨拶
ロシア側=P・ミリュコフ(ヴァイオリン)、P・フドノゴフ(フルート)、A・クリュチコ(ピアノ)出演
日本側=川久保賜紀(ヴァイオリン)、坂本朱(声楽)、奥井紫麻(ピアノ)出演

 日露和親条約170周年記念ロシア文化フェスティバル2025IN JAPANオープニング日ロ合同コンサートは、4月21日東京・銀座ブロッサムにおいて開催されました。
 冒頭、来日したミハイル・シュビトコイ=ロシア連邦大統領文化特別代理・ロシア文化フェスティバルロシア組織委員会委員長、栗原小巻=女優・日本組織委員会委員長が挨拶しました。(別項)出演はサンクト・ペテルブルク音楽会館からセルゲイ・ロルドーギン芸術監督選抜のヴァイオリンのパーヴェル・ミリュコフ、フルートのピョートル・フドノゴフ、ピアノのアレクサンドル・クリュチコ、日本側はヴァイオリンの川久保賜紀、声楽の坂本朱、ピアノの奥井紫麻が、ロシアの巨匠・チャイコフスキー、ラフマニノフ、アリャビエフ、プロコフィエフ、ストラヴィンスキー、そして武満徹らの作品を響かせ、満員の聴衆に感動を与えました。(撮影=丸山英樹)

M・シュビトコイ=ロシア組織委員長の挨拶(要旨)
 尊敬する栗原様、尊敬する皆様、各界の皆様、本日2025年フェスティバルの開幕に際して、このステージから挨拶するのは大変光栄に思います。栗原様と同じステージにいることは何よりも光栄なことです。私が栗原さんを初めてお会いしたのは、モスクワ映画祭の時です。私はすぐ本当に愛し、恋しました。その当時は芥川龍之介の小説、黒澤明の映画がロシアでもとても人気があり、また、歌舞伎、能、日本の美術、演劇も大変人気がありました。でも愛するのは栗原さんでした。ロシアとロシア人にとっては、日本は本当に美しさを象徴する国であります。日本人の美意識は何より素晴らしいことであります。黒沢さんも描いていますがドストエフスキーの「白痴」の映画で、特に主人公のムイシュキン公爵はこの言葉を言っています。「美しさは夜中を救う」。時には、私が思っているのは、我々自身は、美しさを救わなければならない。しかし、日本人が持っている美意識と、ロシア人が持っている美意識は、相互の理解を高めていくことをたすけています。みなさんはテレビを観たり新聞を見たり、本を読んだり、ソーシャルネットワークも、大変詳しい、現代の政治、国際情勢は、みなさんは私より詳しいと思います。しかも、ここのホールにはロシア大使もおり、ステージにおきましてはロシアのヴァイオリニスト、フルーティスト、ピアニストが演奏するとき、それは私が語る以上に、とても良く理解できると思います。ドイツ人がよく言うように、「サラミは長くて、スピーチは短く」。日本政府の皆さま、そして駐ロシア元大使、駐日ロシア大使に、大変感謝申し上げます。両国にとって、文化交流は何よりも大切で、これを一所懸命に保持しなければならない、「美しさと、栗原さんは、この世を救う」と確信しています。どうもありがとうございます。

栗原小巻=日本組織委員長の挨拶(要旨)
 2025年ロシア文化フェスティバル・オープニングコンサート、この日を迎えられましたことを大変嬉しく思っています。客席お一人お一人の皆さま、全ての関係者の皆さまに、心より御礼申し上げます。(ロシア語)シュビトコイ委員長のお言葉は胸に染み入りました。)芸術の美を極められた優れた才能を持った音楽家の皆さまをご紹介いたします。パーヴェル・ミリュコフ、ピョートル・フドノゴフ、アレクサンドル・クリュチコ。皆さまの芸術が我々に深い感動を与えます。ご出演下さる日本の芸術家の皆さまは、川久保賜紀さん、坂本朱さん、奥井紫麻さん。世界が認めた実力と実績、ご出演を深く感謝いたします。今私は、ここに集う出演者の皆さま、会場の皆さまのことを考えています。皆さまの芸術への愛が夢を現実にしました。チャイコフスキーをはじめとする、演奏される作品は、どの曲も永遠の情熱です。皆さまの変わることのない芸術への信念に、心から尊敬の気持ちをお伝えします。(ロシア語)ありがとうございます。

日本とロシアの芸術への想いが強い素晴らしいコンサート 佐野真澄(ピアノ講師・音楽学)
 ロシア文化フェスティバル オープニングコンサート最初はロシアのパーヴェル・ミリュコフのヴァイオリンで、チャイコフスキー作曲ワルツ・スケルツォop.34。アレクサンドル・クリュチコのピアノの軽やかなリズムに乗って、ヴァイオリンの流麗なメロディーが優雅に響き、会場が一気に宮殿の舞踏会の雰囲気に包まれました。続いて日本のピアニスト奥井紫麻。ラフマニノフ作曲前奏曲op.23―No.2:若々しい勢いのある演奏、No.4:美しく揺れ動く曲想に、夢の世界に導かれ、No.7:速い動きのメロディーに胸が締め付けられるようでした。前奏曲op.32―No.13:コラールで始まりメロディーが重なり合いながら緊張感をもって登りつめていき、輝きのあるクライマックスを迎えました。練習曲「音の絵」op.39―No.9:正確なリズムが印象的。最後はホール中に鐘が鳴り響きました。3組目はフルートのピョートル・フドノゴフ。アリャビエフ作曲ナイチンゲールは、激しいクリュチコのピアノの前奏の後、ロシア的などこか懐かしいメロディーと、踊りたくなるような明るい音色に引き込まれ、カデンツァ部分の空間に響き渡る音が耳に残りました。続いてメゾ・ソプラノの坂本朱。プロコフィエフ作曲カンタータ「アレクサンダーネフスキー」より第6曲「死人の野原」。長尾洋史のピアノ前奏のトレモロのメロディーが心に突き刺さり、メゾ・ソプラノの歌声が、戦死した人々への哀悼と愛を私の胸の奥に刻み込みました。次は武満徹作曲の3作品。1曲目は谷川俊太郎作詞の「死んだ男の残したものは」:魂の叫びのように聞こえ、現代の様々な出来事が頭によぎりましたが、最後の1音に救われました。2曲目は武満徹作詞「小さな空」:突き抜ける青空と澄んだ空気、そして幼いころの記憶が思い浮かびました。3曲目も武満徹作詞「翼」:ピアノの洒落た響きも心地よく、自由というメッセージに会場が暖かい空気で満たされました。次はピアノのアレクサンドル・クリュチコが、独奏で登場。ストラヴィンスキー作曲バレエ「ペトルーシュカ」からの3楽章。第1楽章ロシアの踊り:冒頭の和音はリズミカルで、グリッサンドもオクターブのメロディーも軽やか、生き生きとした音と素晴らしく多彩な表現に、一気にペトルーシュカの世界に連れて行かれました。第2楽章ペトルーシュカの部屋:バレリーナへの片思いに苦しむ様子を、切なく、コミカルにピアノ1台で見事に描き出していました。第3楽章謝肉祭:にぎやかな市場の様子や踊りを、ユーモラスに、また斬新な響きと迫力のある重音で弾き切りました。超高難度の曲ですが、それを感じさせることなく、クリュチコの生み出す心情や情景に心躍らされました。思わず出たブラボーと大きな拍手で盛り上がりました。最後はヴァイオリンの川久保賜紀とピアノの高橋優介で、ストラヴィンスキー作曲イタリア組曲。1序曲、伸びの良い音で気持ちよく始まり、2セレナータ、愛のメロディーを抑えたトーンで演奏。不協和音も面白い。3タランテラ、ピアノとの息がぴったり。4ガヴォットとヴァリエーション、古風なガヴォットを和やかに、Var.1リズムに乗って爽やかに、Var.2軽快なピアノに乗せて流れるように演奏。5スケルツォ、ストラヴィンスキーらしい響きが聞こえてきて、6メヌエットとフィナーレ、古典形式のメヌエットを堂々と演奏し輝かしいフィナーレとなりました。チャイコフスキー作曲メロディーop.42―3過ぎ去った日を思い出させるようなメロディーを、慈しむように演奏しました。内に向かうヴァイオリンの誠実な響きと、抒情的なピアノの響きが心に残りました。熱い拍手で幕を閉じました。今年はさらに、日本とロシアの芸術への想いが強くなった素晴らしいコンサートとなりました。
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■2025年4月21日■

バヤン奏者アレクサンダー・マリ―ヒンを迎え
RUSSIA DE NIGHTロシアでナイト!を開催
天野加代子(メゾソプラノ)、後藤ミホ(アコーデオン奏者)、青野真沙子(メゾソプラノ)出演

 4月21日午後7時から東京・豊島区民センター小ホールにおいて、ロシア人バヤン奏者アレクサンダー・マリ―ヒンを迎えて、RUSSIA DE NIGGHTが開かれました。この舞台には天野加代子(メゾソプラノ),青野真沙子(メゾソプラノ)、後藤ミホ(アコーデオン)が出演、モスクワ・カルテットもかけつけました。このコンサートはWe want music without borders をキャッチフレーズに、ロシア歌曲、ロシア民謡など楽しい一夜となりました。
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■2025年1月31日■

イリヤ・ラシュコフスキー(ピアノ)&周防亮介(ヴァイオリン)
オール・ベートーベンのデユオ・リサイタルで魅了

 1月31日午後7時から東京・紀尾井ホールで第8回浜松国際ピアノコンクール優勝のイリヤ・ラシュコフスキーとヴァイオリンの周防亮介(ヴァイオリン)によるデユオ・リサイタルがオール・ベートーベンプログラムで開催されました。
 演奏曲目は、ピアノソナタ第8番ハ短調作品13「悲愴」、ヴァイオリン・ソナタ第5番へ長調作品24「春」、ヴァイオリン・ソナタ第9番イ長調作品47「クロイツエル」で、アンコール曲はヴァイオリン・ソナタ第8番ト長調作品30-3「第3楽章」でした。三大ソナタの奥深く力強い演奏で観客を魅了しました。(撮影=丸山英樹)

弾きこまれる演奏、鳴りやまぬ拍手――仙場真理
 周防亮介とイリヤ・ラシュコフスキーのデュオ・リサイタルを聴きました。2部構成で第1部はピアノソナタ第8番ハ短調作品13「悲愴」、ヴァイオリン・ソナタ第5番ヘ長調作品24「春」、第2部はヴァイオリン・ソナタ第9番イ長調作品47「クロイツェル」でした。
 第1部の1曲目「悲愴」では、沈黙と緊張の空間を打ち破るような厳粛で緻密な和音で始まりました。作曲家自身の心の陰陽と明暗のコントラストを紹介するかのように丁寧に、じっくりと弾きこまれていました。次第に前のめりなくらいにテンポを刻み始め、躍動感を強く感じさせていきました。第2楽章では曲の輝きにラシュコフスキー自身が吸い込まれ、溶けてゆくような演奏で、暗く忍び寄る影さえも美しく優しく響かせていました。第3楽章は、軽やかで一音一音正確な鋭いタッチ、歌うがごとく、叫ぶがごとくの素晴らしい演奏でした。続いてヴァイオリン・ソナタ「春」では、周防亮介のヴァイオリンとラシュコフスキーのピアノが入れ替わりながらテーマを次々に奏で、歌曲を聴いているような感覚でした。バッハの平均律を「旧約聖書」、ベートーヴェンのピアノソナタは「新約聖書」だと言う逸話があります。ピアノソナタ32曲を色々なピアニストが演奏するのを聴いてきましたが、ラシュコフスキーのピアノソナタはベートーヴェンの人生哲学を曲を通して多くの人に伝える伝道師のようにも思えました。厳しい状況にあっても希望を失わず「それでも生きてゆく」と言うベートーヴェンの選択がラシュコフスキーのピアノから大いに伝わってきました。「クロイツェル」では周防のテクニックもさることながら、ニコロ・アマティが美しいソプラノと、ふくよかで奥行きのあるアルトの歌声を驚くほど力強い音色で響かせていました。鳴り止まない拍手の後、アンコール曲はベートーヴェンヴァイオリンソナタ第8番ト長調Op.30-3より第3楽章が演奏されました。聞けば聞くほど周防亮介とイリヤ・ラシュコフスキーのデュオでベートーヴェン曲を聴いてみたくなるような素晴らしいリサイタルでした。
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■2025年1月19日■

ヴァイオリンのステパン・ヤコーヴィッチモスクワ音楽院教授を招聘
ドミトリー・フェイギン(チェロ)と新見浩子(ピアノ)のコンサート
3つの楽器が素晴らしいハーモニーを醸し出す

 1月19日、東京サントリーホール・ブルーローズにおいて、ニューイヤーコンサートが開かれました。モスクワ音楽院教授のヴァイオリニスト、ステパン・ヤコーヴィッチを招き、チェロのドミトリー・フェイギンとピアノの新見フェイギン浩子が、トリオでコンサートを行ったもので、大勢のこどもたちへのプレゼントとなりました。

ロシアの代表的作品を美しいメロディーでーーー仙場真理
 リュミエールドチョコリット主催ニューイヤークラシックコンサートに行きました。 就学前のお子さんとご父兄の方々でブルーローズの会場は埋め尽くされていました。チェ ロのドミトリー・フェイギン、ヴァイオリンのステパン・ヤコーヴィッチ、そしてピアノは 新見・フェイギン・浩子と言う親友 3 人の演奏でした。アンコール曲を入れて全 10 曲がロ シアの作曲家による有名作品でしたので、子ども達も最後まで美しいメロディーに浸るこ とのできた贅沢な時間となりました。 2 部構成で、第 1 部はチェロとピアノでチャイコフスキー曲「ノクターン op.19-4」、ショス タコーヴィッチ曲バレエ「明るい小川」、「チェロとピアノのソナタ op.40 から第二楽章スケ ルツォ」、リャードフ曲「プレリュード op.11-1」、プロコフィエフ曲オペラ「3つのオレン ジへの恋 op.33bis から行進曲」でした。続いてはヴァイオリンとピアノでプロコフィエフ 曲バレエ「ロミオとジュリエット op.64 から 3 つの小品」(「モンタギュー家とキャピュレ ット家」、「アンティル諸島から来た娘」、「ジュリエットの死」)、チャイコフスキー曲バレエ 「白鳥の湖 op.20a からロシアの踊り」が演奏されました。 第 2 部は、チェロとヴァイオリン、ピアノの演奏によるラフマニノフ曲ピアノ三重奏曲第 1 番「悲しみの三重奏曲」は最初に超絶技巧のピアノ演奏があり、チェロとヴァイオリンがそ のメロディーを引き継いで、最後は葬送行進曲として最初のテーマが再現されています。グ リンカ曲「悲愴三重奏曲ニ短調」ではイタリア風カンタービレとロシア的メロディーが融合 したクラシックコンサートの王道を楽しみました。拍手が鳴り止まない中に 3 人が再登場 し、アンコールにハチャトゥリヤン曲「スパルタクスよりアダージオ」が演奏されました。 息のぴったり合ったベテラン 3 人の演奏は3つの楽器が対話をしながら一つに溶け合い素 晴らしいハーモニーを醸し出していました。特に「明るい小川」「ロミオとジュリエット」 「白鳥の湖」「スパルタクス」では、踊り手のいるバレエコンサートのような生き生きとし た臨場感を感じました。演奏する前に宙を見上げるヤコーヴィッチの表情には音楽を通じ て平和を祈念しているようにも感じました。彼らの素晴らしい演奏がいつまでもお子さん 方の心に残っていくことを願わずにはいられませんでした。
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